白血病と聞くと、以前は「不治の病」と言われていましたが、今は薬で治療できる病気です。今回お話を聞いた浜屋さん（仮称）も、完全寛解を目指して闘病されているお一人で、取材時点では断薬まであと1年だそうです（2024年1月現在）。病気に気付いたきっかけから診断、仕事をしながらの抗がん剤治療、そして考え方の変化などをお聞きしました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

体験者プロフィール：
浜屋さん（仮称）

夢半ばまさかの白血病。もう駄目だと思った時に何故かゴールが見えてくる。この人生を何度だって繰り返し生きたいと思うぐらい最高の1日1日を。

記事監修医師：
今村 英利（いずみホームケアクリニック）
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

健康診断で異常を指摘。その日のうちに「白血病です」と

編集部

最初に不調や違和感があったのはいつですか？

浜屋さん

あるとき、下痢が続いたり耳が詰まったりという体の違和感がありました。そして、格闘技を14年ほどやっていて体力には自信があったのですが、発覚の1年前から少しのスパーリングで息が上がり、試合中に首がつるようにもなってしまいました。今、病気の症状を知ると納得できることばかりです。

編集部

受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。

浜屋さん

健康診断で白血球数の異常を指摘され、その日のうちに病院に行き精密検査をしました。そして、マルクという骨髄穿刺の検査をして「慢性骨髄性白血病」と確定診断をされました。慢性骨髄性白血病は、9番の染色体と22番の染色体が入れ替わってしまうことで白血病細胞が無限に作られる病気です。余談ですが、診断された日は2月22日、そして私の誕生日が9月9日でした。

編集部

告知はどのような形でしたか？

浜屋さん

確定診断が出る前に、医師から「間違いなく慢性か急性の白血病」と言われました。「確定診断まで3時間ほどかかるので翌日にご連絡します」と言われましたが、どんな顔をして自宅に帰れば良いか分からず、病院で3時間待ち、確定診断を受けました。健康診断の結果を聞いた日に確定診断まで受けたという流れです。

編集部

その時どのように感じましたか？

浜屋さん

診断後は慢性骨髄性白血病という病に関して当時はまだ知識もなく、ただイメージだけで「死ぬか、骨髄移植か」と浮かび、妻や息子の今後を考えました。ですが、告知してくれた先生（今の主治医です）から「この大学病院には、白血病の分野で有名な先生がいるから安心してください」と言われて少しだけ安心しました。この病気は慢性期、移行期、急性期に分類されます。急性期になると骨髄移植になる可能性があるのですが、私は慢性期だったので「助かった……」と思ったことを覚えています。あとは薬が高額になる、薬の副作用があるのでどう付き合うかの話などもありました。

仕事を続けながらの抗がん剤治療

編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか？

浜屋さん

「まずは、ハイドレアという抗がん剤で慢性骨髄性白血病の元になるがん細胞を減らしていきましょう」と言われました。その後の治療として、「3種類ある慢性骨髄性白血病の分子標的薬から選んでください」と言われ、一番効く薬である第2世代のボシュリフを選びました。そこで初めて慢性骨髄性白血病が薬だけで治る時代になっていることや、薬がよく効けば断薬して寛解に持っていくことができると知り、生きる気力が生まれました。「白血病細胞の数値を0.0032以下に維持できていれば、断薬した患者さんの半数が完全寛解も持っていける」と説明を受けました。

編集部

そのときの心境について教えてください。

浜屋さん

「治るんだ」と思うと、とにかく安心しました。でも、お金に関する不安は消えませんでした。最初の3カ月は、毎月20万円程無くなっていきました。4カ月目からは、4万4000円になって助かっています。今は通院が年に4回なので、年間17万6000円が寛解まで必要です。のちに、高額療養費制度という助成制度があることを知りました。ですが、高い費用がかかることに変わりなく、両親や兄弟にも心配をかけたくないので話していません。

編集部

実際の治療はどのようにすすめられましたか？

浜屋さん

ハイドレアの治療中は、副作用が吐き気ぐらいだったので吐き気止めを飲みながら何とか仕事にも行けていましたが、ボシュリフ治療の初期はとても辛かったです。まず食欲が無くなりました。食べられないわけでは無いのですが、食事が進まず、毎日貧血でくらくらでした。あとは、突然全身の痒みと立ち上がれないほどの吐き気に襲われました。仕事中でも予測無しで襲ってくるので、全身の痒みが出たときは発疹でパンパンに腕が腫れたり、唇が片側だけ殴られたように腫れたりする時がありました。一番辛かったのは、痒みが夜中に起きることもあり、妻にも言えず一人でとにかく耐えなければならなかったことです。診断を受けて今年で3年目になりますが、最初の1年が最も辛く、2年目3年目と徐々にがん細胞が減るにつれて、下痢や耳の詰まり、筋肉のつりなども無くなり、少しずつですが楽になってきました。

配信： Medical DOC