「好き」に出会える美術館がリニューアルオープン『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』


国宝《油滴天目茶碗》南宋時代・12-13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)

私の場合、ひとつを挙げると、「うつわに心が動く自分を見つけたとき」です。

小さい頃はうつわを道具としか見ておらず、食器なんて使えれば何でもいいと思っていました。母がアウトレットで食器を真剣に選ぶのを尻目に、「ブランドのバッグ買った方が良くない?」と、生意気なことを思ったものです。


《三彩印花 花文 輪花盤》遼時代・11世紀 大阪市立東洋陶磁美術館(李秉昌博士寄贈)

それから二十年ほどたち、不思議なことに、いつしか私もうつわに心が惹かれるようになっていました。明確なきっかけはありません。しかし今では、好みのうつわに出会うと「かわいい」と愛でる気持ちが湧いてきます。

いやはや、まさか喋りも動きもしない「陶磁器」に対して、「くぅ〜〜〜っ、かわいい!」と胸がときめく体験をすることになろうとは。


《白地黒花 唐草文 鉢》金時代・12-13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館(李秉昌博士寄贈)

ですが、同じような人が結構いるのではないかと踏んでいます。そんなあなたと手を取り合って喜びたい。大阪市立東洋陶磁美術館がついにリニューアルオープンしました!(拍手)

大阪・中之島に堂々と建つ同館が開館したのは、1982年11月。中国や韓国をはじめ東洋陶磁で世界的に知られる「安宅コレクション」を住友グループから寄贈されたことを記念して、大阪市が設立しました。


展示風景

エントランスの増改築や展示環境の整備、さらには国宝「油滴天目茶碗」専用の独立ケースの導入などのリニューアルが行われ、この度オープンとなりました。

2024年4月12日(金)から9月29日(日)まで、リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」が開催されています。


国宝《飛青磁 花生》元時代・14世紀 大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)

たくさんの見慣れない作品と出会えて、刺激のある楽しい展示でした。展示環境の工夫も含めて、要チェックポイントを紹介していきます!

見どころ①約380件のコレクションがずらり


展示風景

本展では同館が世界に誇るコレクションから約380件が展示されます(うち国宝2件、重要文化財13件)。1件につき30秒の鑑賞だったとしても、たっぷり約3時間楽しめてしまう……展示の充実っぷり、伝わりますでしょうか?

韓国陶磁、中国陶磁、日本陶磁などに区切られ、さらに色や技法別など特徴ごとにまとめて展示されています。件数こそ膨大ですが、単調な感じは無く、テンポよく作品を見ていくことができました。


重要文化財《木葉天目 茶碗》南宋時代・12-13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)

私は丸いもの・小さいものが好きなので、撮ってきた写真が似通ってしまいますね……。同館の展示室は基本的に撮影OKなのも嬉しいです(フラッシュ禁止など注意事項にご留意ください)。

私もある程度は美術館に通っているつもりでしたが、日本の焼きものに知見が偏っていることに気づきました。中国や韓国の陶磁には見慣れない形やデザインのものが多く、古い作品でも現代アートのように新鮮に感じられました。

見どころ②国宝「油滴天目茶碗」専用の独立ケース


展示風景

国宝に指定されている「油滴天目茶碗」は、専用の独立ケースで展示。360°どこからでも見られるようになりました。


茶碗の内側にある油のしずくのような斑文は、光の角度によって金や青など虹色に変化します。


国宝《油滴天目茶碗》南宋時代・12-13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)

茶碗の内側にはカーブがあるため、目の高さを変えると斑文の色も変わります。上下左右に頭を動かしてさまざまな位置から見ると、油滴天目茶碗の魅力の深さに気づけるはず。

ちなみに、油滴天目茶碗の複雑な色彩を鑑賞するための特別な照明も使われています。今なお謎の多い油滴天目茶碗について、最新の科学的な研究が反映されています。

関連記事: