大人気の韓国料理「プルコギ」を、じつは超カンタンな本場のレシピで作ってみませんか?市販のたれに頼らなくても、だいたい家にある調味料だけで作れちゃうんです。「プルコギ」という名前の本来の意味や韓国で人気のアレンジ料理とあわせて、韓国料理研究家の本田朋美さんに教えていただきました。
こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。
コロナが落ち着いてから、海外から日本を訪れる観光客がぐんと増えましたよね!
お隣の韓国も同じで、以前にも増して欧米の方たちが多く訪れています。
今も世界的に圧巻しているBTSのようなアイドルのお陰なのか韓流ブームや韓国カルチャーの人気は衰え知らず。
韓国料理は「K-FOOD」として世界を魅了していますね。
先日、ソウルの韓食振興院が発表した「2023年 海外で良く食べられている韓国料理」の中で、東京を対象にした調査がありました。
発表されたランキングは以下の通り。
1位:キムチ 56.1%
2位:ビビンバ(ピビムパッ) 29.8%
3位:プルコギ 13.6%
キムチはスーパーの漬物売場に専用のコーナーがあるほどですから、1位は大いに納得!
2位のビビンバは、韓国料理店での大人気メニューでしょう。
3位のプルコギは、最近SNSでよく見かけますね!ご家庭で作られる方も多いのではないでしょうか?
そこで今日は、3位のプルコギに焦点を当てて探求していきたいと思います♪
「プルコギ」は薄切り肉の甘辛い炒めのもののことではなく…
まず最初に、日本では「プルコギ」を「薄切り肉を具材と一緒に甘辛く炒めた料理のこと」と認識している方が多いのではないでしょうか?
じつはこのプルコギという名前、「プル=火」「コギ=肉」という韓国語から来ていて、本来は「火でお肉を焼いたり炙ったりして食べる料理全般」のこと。なので例えば、普通の焼き肉も「プルコギ」の一種なんですよ。
またプルコギは牛肉のイメージが強いですが、豚プルコギ、鶏プルコギもあり、コチュジャンで味付けをすることもあるんですよ。
「プルコギ」の歴史
ここから、歴史をさかのぼっていきましょう。
韓国の伝統的な焼肉は、三国時代(4~7世紀頃)に中国から高句麗に伝わった「貊炙(メッジョッ)」に由来します。
「貊(メッ)」は、中国の東北地方から高句麗の地域を指し、「炙(ジョッ)」は肉を串に刺した直火焼きのこと。
味付けにはみそを使い、肉は豚肉中心でした。
その後、高麗時代(918年~1392年)に入ると仏教文化となったことで、動物の屠殺が禁止されました。
よってこの頃に飼育されていた馬は戦闘用や雑役用、牛は農耕用でしたが、外国の使臣が訪れるときは、肉料理を用意する必要があったので、さきほどご紹介した「メッジョッ」を取り入れました。ですので、実は国王や重臣は肉を食べる機会がありました。
高麗時代の末期になると、元との交流が盛んになったため、肉料理でのもてなしが欠かせなくなりました。
そうなると、殺生禁止とも言っていられなくなり、庶民の間でも徐々に野生の雉(きじ)や猪を食べるようになったそうですよ。
また、高麗時代に首都だった開城(ケソン)では「雪裏炙(ソルリジョッ)」という調理方法が流行しました。
「ソルリジョッ」は、薄切りにした牛肉を包丁の背で叩いたものを串に刺してごま油と塩で味付けをし、一度さっと焼いたら冷水に浸け、再び炭火で焼くという工程を3回繰り返し、最後に再びごま油を塗って肉を焼いたら完成。
かなりの手間ですが、当時の牛肉は今のようにやわらかくはないでしょうから、この方法で調理すると肉がやわらかくなっておいしかったそうですよ!
朝鮮時代に入ると「メッジョッ」は宮廷で「ノビアニ」という名前に代わり、下味をつけた牛肉を網で焼くようになりました。
では、肝心の「プルコギ」という名前は、いつから使われているのでしょう?
1922年のとある雑誌に、詳しい料理の説明はなかったのですが、料理名だけが初めて登場したそうです。
その後、1930年代に入ると、北朝鮮の平安道(ピョンアンド)出身の国語学者が、「プルコギ」は平安道の方言だと言及しました。
料理としての歴史は長いのですが、「プルコギ」という名前の歴史は意外と浅いですね。
汁たっぷりのプルコギは日本の「すき焼き」の影響?
現在の「プルコギ」は、大きく分けて2種類あります。
朝鮮時代の流れを受けて、網焼きにしたりフライパンで炒めたりするものと、鍋もののように汁気があるものです。
いまの仕事をしていなかったとき、知人にソウルのプルコギ専門店に連れていってもらったのですが、それまでプルコギは「炒め物」のことだと思い込んでいたので、ジンギスカンのような鍋の上で肉を炒め煮にすることに驚きました。
さらに驚いたのが味です。意外にも甘味が前面にでていて、しょうゆの風味が薄かったのです!
この鍋スタイルのプルコギが登場した経緯は諸説ありますが、日本のすき焼きの影響だと思われます。
この説が正しければ、汁ありプルコギの甘さには納得ですね!
また、鍋スタイルのプルコギに似たような料理として「トゥッペギ(土鍋)プルコギ」があります。
汁たっぷりのプルコギが土鍋で提供されるので、熱々の状態が長く続きます。
逆に、汁気が少ないプルコギもあります。
釜山の北部にある蔚山(ウルサン)市蔚州郡の彦陽邑(オニャン)で作られている「彦陽式プルコギ」は、汁気がほとんどないのが特徴です。1900年前半は彦陽邑一帯に牧場が多かったので牛肉料理が発達し、1960年代入ると高速道路の開通に伴い韓国全土に彦陽プルコギの評判が広まりました。
その後、ソウルにある「ヨッジョンフェグァン(駅前会館)」の2代目が1962年に「パサップルコギ」という名前で商品化しました。
「パサッ」とは韓国語で「からからとした」「水気がなく焦げつく」という意味で、網にのせて炭火で焼くので燻煙の香りがするのが特徴です。
配信: フーディストノート