「怒り」を鎮める新手法!  感情を紙に書いて破り捨てる“アンガーマネジメント”名大の研究成果

「怒り」を鎮める新手法! 感情を紙に書いて破り捨てる“アンガーマネジメント”名大の研究成果

名古屋大学の研究グループは、「怒りを抑制する方法を新たに発見した」と発表しました。怒りを感じた際に、その状況を客観的に紙に書き、捨てるか裁断すると怒りが消失するとのことです。この内容について舘野医師に伺いました。

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監修医師:
舘野 歩(東京慈恵会医科大学附属病院)

東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。現在は「東京慈恵会医科大学附属病院」勤務。専門は精神神経科。日本精神神経学会専門医・精神科指導医、日本森田療法学会認定医、精神保健指定医。東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授。

研究グループが発表した内容とは?

今回、名古屋大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。

舘野先生

今回紹介する研究報告は、名古屋大学らの研究グループによるもので、研究は学術誌「Scientific Reports」に掲載されています。

研究グループは、まず参加者が書いた文章に対して低い評価を与えることで怒りを生じさせ、その後、怒りを感じたときの状況を客観的に紙に書いてもらいました。そして、怒りを感じたときの状況が書かれた紙を丸めてゴミ箱に捨てる場合と、捨てずに持っていた場合を比較しました。怒りを表す5つの形容詞を6件法で主観的な評価を測定し、その平均を「怒り得点」としました。

研究の結果、紙をゴミ箱に捨てた参加者は侮辱される前と同程度まで怒り得点が低下し、捨てずに保持した参加者の怒り得点はそれほど下がりませんでした。また、ゴミ箱に捨てる代わりにシュレッダーで裁断すると怒り得点は減少し、透明の箱に入れただけでは怒り得点は減少しませんでした。

こうした結果から、研究グループは「ビジネスシーンで怒りを感じた際には、メモを取るように怒りを書き出して捨てることで、その場の怒りを抑えることなどに応用できると考えられる」としています。さらに、「本手法を応用することで、職場や家庭で簡単に怒りを抑制できるようになることが期待される。今後、紙だけでなく電子メールや電子ファイルのようなデジタルの媒体でも、同様の効果が得られるのか検証する必要がある」と、研究グループは述べています。

今回の研究の背景とは?

今回の怒りに関する研究が実施された背景を教えてください。

舘野先生

怒りを効果的に抑制する方法についてはアンガーマネジメントが知られていますが、「客観的なエビデンスに基づいた怒り抑制法ではない」と研究グループは指摘しています。その上で、「感情のコントロールに用いられる再評価や自己距離化という手法は、怒りを抑制することが証明されているものの、どちらも怒っている最中におこなうことは難しく、簡便で効果的な怒り抑制手法はない」とも問題提起をしています。

こうした観点から研究グループは、「自分の捨てたい思いを皿に念じ封じ込めて割ることで、自分の気持ちを捨て去ることができるという“はきだし皿”と同じように、怒りを感じた状況を紙に書き、その紙を捨てることで怒りが収まるのではないか」と考え、検証するに至っています。はきだし皿は、愛知県清須市の日吉神社でおこなわれている、捨てたい思いを皿に封じ込めて、それを境内で割る神事のことです。

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