高齢化が進み、介護が必要な高齢者も増加しています。2022年の国民生活基礎調査によれば、介護の担い手のうち約46%が同居家族となっており、自分の親や配偶者の介護疲れに悩んでいる人は少なくありません。今回は、家族の介護によるストレスの原因やストレスを解消する方法について、介護福祉士に西山さんに伺いました。
≫“介護疲れ”から“介護うつ”にならないために 介護のストレス・疲れを軽減する方法を介護福祉士が解説
監修介護福祉士:
西山 繭子(介護福祉士)
介護福祉士・社会福祉士・保育士資格を保有。大学で福祉資格を取得後、自治体の福祉窓口における相談業務、介護老人福祉施設の介護士、障がい者ヘルパーなどに従事。仕事を通じ、地域住民や利用者とその家族の困りごとに耳を傾ける。子育て中に保育士を取得し、トリプルライセンスのライターとして、介護・高齢者医療・保育の記事などを執筆。現在は、福祉・保育の正しい知識やケアの方法を広めるべく、介護福祉と子育て記事の監修者やライターとして活動中。
家族の介護をすると溜まるストレス…主な原因は?
編集部
家族の介護によってストレスが溜まる原因はなんですか?
西山さん
そもそもの話になるのですが、基本的に介護はストレスが溜まるものだと考えましょう。介護は他者の心身に触れるため、プロの介護士も日々のストレスを抱えています。特に家族介護では、身体・精神・経済的な負担が大きく、強いストレスを感じます。
編集部
介護によって具体的にどのような負担がかかりますか?
西山さん
介護によってかかる負担は、日常生活全般のケアによって生じる身体的負担、見守りの緊張感や自分の時間を奪われる精神的負担、介護費用や介護者の離職によって起こる経済的負担です。負担感が大きいまま放置しておくと、介護疲れからストレスが溜まり、自分でも気付かないうちに「介護うつ」を引き起こす恐れがあります。
編集部
介護者がストレスを感じやすい状況を教えてください。
西山さん
本人の疾病や要介護度にかかわらず、介護者はストレスを感じます。例えば、高齢者が自立に近い状態でも、移動のときに転びやすいなど気が抜けないケースもあります。中でも、認知症の方との関わり方は難しいケースが多い傾向にあります。
編集部
なぜ認知症の方の介護はストレスが溜まりやすいのですか?
西山さん
認知症の症状が初期の場合、適切な関わり方がわからない、あるいは気持ちの問題によって適切に関われない場合があります。認知症が進むと、徘徊や被害妄想、失禁、暴力的になるといった症状が見られ、介護者は大きなストレスを感じやすくなります。
介護ストレスが溜まることで起こる問題は?
編集部
介護ストレスが溜まるとどのような問題が起こりますか?
西山さん
介護ストレスは、介護うつを引き起こす原因です。介護うつは、自覚がないまま進みやすいと言われています。家族介護は多くが1対1の閉じられた空間で、息つく暇がありません。また、プライベートな問題は友人や親戚にも相談しづらく、うつを発症しやすい条件が揃っています。
編集部
介護うつになりやすい人の特徴はどんなものがありますか?
西山さん
責任感が強く、真面目な方、優しい方は介護うつになりやすいと言われています。何事にも真摯に取り組む方は「自分がやらなければ」という責任感から介護を一手に引き受け、うつを引き起こすことが少なくありません。介護うつは、介護がつらくてもやめられない状況や、介護によって引きこもりがちになることから、症状が悪化しやすい傾向です。
編集部
介護うつの症状を教えてください。
西山さん
介護うつの症状も一般的なうつ症状と変わりません。具体的には、食欲がない、気分が落ち込む、寝つきが悪い、イライラする、不安感や焦燥感があるといった症状です。自分の状態が介護うつが知りたいときは、インターネットで診断できるストレスチェックやうつのチェックリストもあります。介護うつを疑われるときは、心療内科や精神科を受診するのも方法の1つです。
編集部
その他、ストレスによって起きる問題は?
西山さん
介護者の心のバランスが崩れると、自分自身だけでなく、家族や周囲に影響を及ぼします。過度なストレスは、虐待や介護放置など、大切な家族を傷つける事態にもなりかねません。介護うつによって、心中や自殺を考えてしまうケースもあります。ストレスを溜めないよう、介護者には休息や気分転換が必要です。
配信: Medical DOC