「口元が下がる」「手に力が入らない」は脳梗塞のサイン!? 寝たきりを防ぐための予防法とは【医師解説】

「口元が下がる」「手に力が入らない」は脳梗塞のサイン!? 寝たきりを防ぐための予防法とは【医師解説】

厚生労働省の2022年人口動態統計によると、脳卒中を代表とする脳血管疾患は日本人の死因の第4位(1位:がん、2位:心疾患、3位:老衰)。その脳卒中の約70%を占めるのが、脳梗塞(のうこうそく)と呼ばれる病気です。どのような病気で、原因は何か、どんな症状があるのかなどを、きくち総合診療クリニック理事長・院長の菊池大和先生に教えてもらいました。

教えてくれたのは…

監修/菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。

脳梗塞とは

「脳梗塞」は脳卒中の1つです。脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることによって脳が障害を受ける病気の総称。その中で「何らかの原因で脳の血管が詰まり、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気」を脳梗塞と言います。

脳梗塞には原因別に、以下の3タイプがあります。
・ラクナ梗塞…太い血管から枝分かれした細い血管が詰まる   
・アテローム血栓性脳梗塞…首や脳の血管の動脈硬化などが進行し、血管が詰まる
・心原性脳塞栓症…心臓でできた血栓が血液に運ばれて、脳の血管に詰まる

脳梗塞は脳卒中の中で最も多く、全体の約70%以上を占めます。次いで多いのが、脳の細い血管が裂けて脳の中に血の固まりを作る脳出血で約20%。残る約10%は、脳の太い血管にできた脳動脈瘤が裂けて脳の表面に出血するくも膜下出血です。

脳梗塞は男性に多いが、女性は閉経後から増加

脳梗塞を発症するのは65歳以上の高齢者が全体の9割を占めますが、50歳以下で発症する若年性脳梗塞もあります。男女では、不摂生な生活になりやすい男性に圧倒的に多く見られます。

女性は閉経後、加齢とともに発症が増える傾向にあります。女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、血管や骨などの状態を維持する機能を有していますが、これが閉経で減少することにより、血管などに悪い影響が出ると考えられています。

脳梗塞の症状

症状は、脳梗塞により脳のどの部位が影響を受けたかによって異なります。主に、以下のような症状があります。

・片手・片足のまひ、脱力、しびれ
・ろれつが回らない、言葉が出ない
・めまい
・意識がもうろうとしたり、起きているけれど反応が鈍い
・片目が見えない、物が二重に見える
・立てない、歩けない

ただし、高齢者の場合は症状が出ないこともあります。家族が「普段より元気がなくておかしい」と感じて受診したところ脳梗塞が判明した、というケースも少なくないので注意が必要です。

脳出血の症状との違い

一般的に脳出血は、発症した後、数分で症状が進行します。脳梗塞にはほとんど見られない頭痛を伴うこともあります。一方、脳梗塞は、徐々に悪化しながら同じ症状を繰り返したり、症状の進行に2~3日かかったりします。

ただし、これはあくまで傾向の1つで、上記に当てはまらないケースも少なくありません。症状だけで脳出血か脳梗塞かを見分けることは不可能で、確実な診断にはMRI検査が必要です。

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