●昔の子どもたちに比べると、友達同士で過ごす絶対量は減っているのが現実
「昔と今では、子どもたちを取り巻く環境が大きく変化したということが、子どもたちの“友達力”にも影響を及ぼしているといえますね」
そう話すのは、教育評論家の親野智可等先生。昔は当たり前にできた経験が、今はなかなか経験できない状況にあるという。
「昔は、公園や原っぱで子どもたちが鬼ごっこをしたり、缶蹴りをしたり、野球をしたり…そういう光景が当たり前にありました。そこからは大人が入ってこない友達同士の世界です。そこで、子どもたちは、いろいろなことを体験し、学びました」(親野先生 以下同)
そういう中で“友達力”、つまり人間関係の土台を作っていったのだ。
「友達の誘い方、自己主張の仕方、ケンカの仕方、仲直りの仕方、謝り方、逃げ方、遊びのルール、リーダーシップ、フォロワーシップ、互いの距離の取り方、学年をこえた縦の関係、友達をかばうこと…。また、集団遊びをすることで、たまには一人で居る良さも知りました」
幼児期の子もまた、公園に行けば知ってる子から知らない子まで、多くの子どもと交流する機会があった。
「もちろん、今の子どもたちもまったくそういう機会がないわけではありませんが、昔の子どもたちに比べればかなり友達と過ごす絶対量は減っているのが現実です。その背景にあるのは、少子化によって子ども自体の人数が減っていますし、きょうだいも少なく、一人っ子も多い。防犯上の問題で子どもだけで遊ばせにくくなりました。また、今の子どもは幼児期から習い事をたくさんしている子も多く忙しい。ゲームなど一人遊びの増加…など、さまざまです。もちろん、習い事でお友達と接する機会はあっても、あくまでレッスンですから、先生との関わりがメインですよね」
●できるだけ、友達と関われる環境、機会を意識的に作ってやることが大事。しかし、親子共々が無理のない範囲で!
では、親として何かすべきこととは?
「親御さんは、できるだけ友達と関われる環境、機会を意識的に作ってやる、促してやるといいですね。幼児であれば、例えばママ友同士の子どもで遊ばせる機会を増やす。親子サークルに参加するというのもいいかもしれません。小学生の場合は、安全面の確保というのが最優先されますので、まずおすすめなのは、学校の放課後の校庭開放や地域の児童館です。児童館は、大人の目もほどよく行き届いていて、しかも地域の子たちが集まるため、地域は同じでも違う学校の子や、他学年の縦の交流もできるのでとてもいい環境です。あとは、家で友達と遊ばせる。このとき重要なポイントは、大人ができるだけ干渉や口出しをしない。あくまでも見守る姿勢で子どもたちがのびのび交流できる機会を作ってやりましょう。少々のケンカならば見て見ぬふりして、子どもたち同士で解決することを経験させるのもいいかもしれません。それと、言い忘れましたが、従兄弟など親戚の子と遊ぶ機会を増やすのもいいですね」
ただし、お子さんがそういった機会を臨んでいない場合、お母さんが性格的にストレスになるという場合は、無理しないことも大事だという。
「あくまでも、親御さん、お子さんが負担にならないようにしましょう。友達と遊ぶことを怖がる、気が進まない幼児に“遊びなさい!”と無理させる必要はありません。それならば、親子の時間をより充実させて、少しずつその子のペースでお友達と交流できるようになる時を待ちましょう。小学生についても、性格的に一人で居ることを好む子も居ますので、そういう場合は何か打ち込めるもの、自分の世界を持てるものをその時期に伸ばしてやるのもいいかもしれませんね」
友達力は、人間関係の土台作りです。今の時代の環境のなかで、工夫してお子さんに友達と関わる機会、場所を与えてやり、将来の人間関係づくりに備えていきたいものですね。
(構成・文/横田裕美子)