●子どもが発する言葉は、自然と親の言葉のコピーになる
「お子さんの友達関係を良好にするために、ぜひ家庭内で気を付けて意識していただきたいことがあります。それは、“親御さんが家庭内で話す言葉”です。つまり、子どもが発する言葉というのは、自然と親の言葉のコピーになるからです。長年、教育現場で多くの子どもたちを見てきて実感したことは、子ども同士で仲良くできる子、人気がある子、みんなから好かれる子は、“いい言葉を使っている”ということです。逆に、友達とトラブルが多い子、すぐ揉めてしまう子、避けられてしまう子の場合、“言葉が悪い”ことに原因があることもあるんです」(親野先生 以下同)
“言葉が悪い”とは、どういうことなのだろうか?
「例えば、いつも子どもを叱っている親がいるとします。『また、〇〇しない! なんでしないの? しなきゃダメでしょっ!』。『勉強しないとおやつ抜きだよ!』など、否定的だったり脅したり。そういう言葉を子どもに毎日言っていると、子どもも友達に『また〇〇しない! 〇〇しないとダメじゃん!』とか、『〇〇してくれないと、遊んでやらないよ!』と、親の言葉を真似して言うようになるのです。人間関係というのは、“言葉”で決まってくる部分が非常に大きいので、すごく重要なのです。親御さんの性格がどうであれ、家庭内で使う言葉には気を付けていただきたいと思います」
●親子関係の土台に“不信”を作ってしまうと、その後の人間関係も“不信”を土台に作ってしまう
そうした、否定語、脅し言葉は子どもの言葉に影響を及ぼすだけでなく、子どもの心理にも深刻な影響を及ぼすという。
「親から否定語や脅し言葉を浴びせられ攻撃されると、子どもは“お母さんに嫌われてるのかな…”という気持ちになり、親に対する不信感を抱いてしまいます。そのように、親子関係の土台に“不信”を作ってしまうと、その後の人間関係も“不信”を土台に作ってしまうのです。つまり、親を信頼できない子は、友達関係で友達を信頼できなくなってしまいます」
そうなると、いくら友達と遊ぶ機会に恵まれていても、あちこちでトラブル関係を作ってくるばかり…。だからこそ、まず家庭内で育む土台がとても大事になってくるという。
「親御さんがいい言葉を使い、『うんうん、そうだね、大変だよね』『イヤだったね』など、“共感的”に子どもの話しを聞いたり、よく褒める親だと、子どももそういう対応ができるようになります。つまり、親の愛情を実感できている子は、友達にも親切にできるのです。そして、そういう子の周りには自然に友達が集まります」
さらに、親の愛情を実感できる方法として、家族のスキンシップも効果的だそう。
「じゃれつき遊び、くすぐりっこ、身体を使った遊びなどで、ゲラゲラ笑って親子でふざけ合うことはぜひ、やってほしいですね」
実は、ゲラゲラ笑ってふざけるということは、脳にも想像以上の効果をもたらすという研究結果もあるとか。
「ゲラゲラ笑ってふざけると、脳の中の“偏桃体”というところが活発になります。ふざけ合ったあとに絵を描いたり、食事をしたり、勉強をしたり、落ち着いた行動をすると理性をつかさどる“前頭前野”がブレーキをかけます。そういう体験を繰り返すことで、前頭前野のブレーキをかける力が鍛えられ強くなるのです。つまり、感情のコントロールができる子になる。そうすると、例えば友達関係で何かイヤなことを言われてイラっとしても、ちゃんとブレーキがかかり、キレない子どもになるのです。毎日一回は、そういう時間をぜひ作ってみてください」
友達関係の土台は、家庭環境が大きく影響しているようです。ぜひ、今日から心がけてみてください!
(構成・文/横田裕美子)