●両親が不仲な家庭で育った子どもへの悪影響は想像以上
「夫婦が離婚や別居ではなく“仮面夫婦”という夫婦のカタチを選択することは、その夫婦にしかわからない経緯、事情があってのことなので仕方ありません。さらに、仮面夫婦は、周りには円満夫婦を装っているので一見すると普通の夫婦と変わりなく見えますが、家庭内ではそうはいきませんね。目を合わせなかったり、会話がなかったり、ただならぬ緊張感が漂っていたり…。そういった雰囲気の家庭で育った子どもへの悪影響は、実は想像以上なのです」
そう話すのは、夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さん。子どもだからわからないだろう…という考えは甘いという。
「子どもはすぐその異様な雰囲気を感じ取ります。もちろん、小さい子はその理由まではわかりません。しかし、“お父さんとお母さんが目を合わせていない”“話していない”“仲が良くない”ということは敏感に感じ取ります。やがて、成長していくにつれて、“あっ、そういうことだったのか”と、点と点が線でつながるのです」(高草木さん 以下同)
では、わからないなりにもピリピリした両親の雰囲気を敏感に感じとってしまった子どもには、どんな悪影響があるのだろうか?
「親の機嫌が悪いのは、“僕のせいかもしれない”、“僕が機嫌を取らなきゃ”といったように、親の顔色を常にうかがう子になってしまう可能性が高いです。いつも自分を殺し、我慢し、無理をして“いい子”を演じるようになるのです」
さらに、両親のバチバチした雰囲気をなんとか回避させるために、気を自分にむけさせようと無意識に以下のような行動を起こしたりするという。
・不登校
・引きこもり
・リストカットなど
「私も、リストカットしてしまった中学1年くらい子の相談を受けましたが、そういった多感な時期の子は特に注意が必要です」
さらに、精神的に追い込まれることで以下のような症状が出る子もいるそう。
・うつ病
・摂食障害
・不安障害
・強迫障害
●子どもを持つ“仮面夫婦”は、家庭内でも仮面夫婦を徹底する!
このように、夫婦だけの問題が実は子どもにとってどれほどの大問題かということがわかる。
「仮面夫婦を選択するのは夫婦の自由です。しかし、子どもに悟らせない、不安にさせないように徹底する。つまり、仮面夫婦を貫くならば、家庭内でも徹底する覚悟が必要なのです。子どもを介してしか話さなかったり、目を合わせなかったりすれば、すぐに子どもはただならぬ雰囲気を察知します。さらに、互いの悪口を子どもに言うケースもありますが、もってのほかです。“パパってホントに使えないのよね~”、“ママは意地悪だよね”などと言われた子どもの気持ちは計り知れません。大好きな人から大好きな人の悪口を言われたら悲しいのはもちろん、誰の味方をしていいかわらないですよね? その混乱が子どもの精神状態にどれだけの影響を及ぼすでしょうか?」
離婚せずに、あえて“仮面夫婦”を選択する夫婦の理由は、多くが子どものためだという。ならば、その子どもを第一に考えてほしいと、高草木さんは話します。
「特別仲のいい夫婦を演じる必要はありませんが、子どもに余計な気を遣わせたり、わざわざ親それぞれのマイナスイメージを子どもに刷り込むようなことは避けましょう。それは、子どもの今後の人格を左右したり、トラウマになったりして大人になっても苦しむことになるからです。子どもがのびのびと、子どもらしく、心身ともに健康に育つには、何よりもパパとママの“笑顔”が一番なのです」
夫婦間がどんな状態であっても、“親に守られている”という安心感こそが、子どもの成長に大事であり、大きく影響するということを忘れないようにしましょう!
(構成・文/横田裕美子)