●液体ミルクって安心して飲ませられるの?
先日、厚生労働省は国内での液体ミルクの一般販売に向け、衛生基準などを設ける検討を始めました。これまで日本で液体ミルクの導入が進まなかったのは、まさにこの安全基準にまつわる規格がなかったためだと難波さんはいいます。
「現在、日本には、製造・表示・成分ともに、『乳児用調製粉乳(粉ミルク)』の規格しかありません。そのため、乳児用調製液状乳(液体ミルク)を日本で製造・販売する場合には、液体ミルクの規格基準の設定をする必要があります。この問題が解決されない限り、『日本製の液体ミルク』を製造・販売することは難しいですね」(難波さん、以下同)
なお、現在でも海外で製造された液体ミルクを通信販売などで購入することは可能。新たな規格が求められるのは、あくまで「日本製の液体ミルク」に対してだといいます。ちなみに、海外製の液体ミルクには世界的に通用する食品の国際基準「コーデックス規格」が適用されているのだとか。
「国産の液体ミルクに関しては、日本の乳業メーカーも研究を進めています。赤ちゃんに飲ませるものなので、品質向上に時間をかけて取り組んでいるところですね」
●今まで、日本で導入されてこなかった訳は?
ただ、そもそも、なぜこれまで液体ミルクの規格がなかったのでしょうか?
「単純にニーズが少なかったことが原因と思われます。液体ミルクが国内で注目されはじめたのは、実は阪神淡路大震災のときから。以来、メーカーが海外から液体ミルクを買い付けるなどして、研究・開発自体を行ってきました。ただ、その時点ではまだ、規格が検討されるほどの声ではなかったのだと思います。
ご要望が急増したのは、2011年の東日本大震災と昨年の熊本地震以降。被災地ではお湯が不足するため、フィンランド製の液体ミルクが寄贈され、広く認知されるようになりました。これを機に、製品化に向けて本腰を入れるようになったのではないでしょうか」
前述のように、現在、政府は日本製の液体ミルク導入を急務課題と捉え、製造・販売に向けて取り組んでいます。とはいえ、赤ちゃんが口にするものだからこそ、時間はかかってもしっかりとした安全基準を策定してほしいところです。
(取材・文=吉岡 成味/やじろべえ)