●リビングに置くべき“3種の神器”とは?
小川さんによると、子どもの学習に適した環境を整えるにあたっては、リビングに「子ども用の本棚」を置くだけで十分とのこと。
「小学4年から本格スタートする中学受験に臨むとなれば勉強モードにする必要がありますが、それ以前の幼少期は、『学習への興味』を高めてあげることがポイントになります。そこで、おすすめなのが子ども向けの図鑑などをリビングに置くこと。子どもの知的好奇心を育むには、直接触れるもの、触覚の刺激がとても大事になってきます。スマホなどの端末経由の写真と、印刷された写真では、印刷の方が質感までリアルでクオリティも高いですよね。また、画面が小さいスマホに比べ、図鑑は1ページでたくさんの情報に触れることができます。
好奇心というのは、全ての学びの入り口です。興味があるものを見ていたら、それに関連するものに興味が出てきて、どんどん派生していくものです。そういう意味では図鑑や辞書が生活空間の中にあって、興味をもったそばから調べられるというのは大事なことだと思います」(小川さん、以下同)
また、図鑑や辞書に加えて、もう一つリビングにあるといいのが「地図」だそうです。
「いま自分は地球のどこにいて、地面や海がどう広がっていて、自宅や近所、街はどこにあるのか…というのを学ぶのは、物事の視野を広げるのに大きく役立ちます。そのためのツールが地図です。物事の捉え方を伸び縮みさせる、つまり考える力を育てるうえでも非常に効果的です。自分自身を外から眺め、物事を俯瞰する、客観的にとらえる力は地図の世界で身につくものと考えています」
●子どもが食いついた本がその子を伸ばしてくれる
では、図鑑や辞書を置く場合、具体的にどのような内容のものが望ましいのでしょうか?
「これには、正解はありません。ただ、ひとつ言えるのは『子どもが喜んで食いついてくれるもの』が最も望ましいということ。そのうえで、その図鑑の横に、もう少し情報量が多いものや、多少食いつきが悪くても読んでほしい本を置いておくといいと思います。子どもに与える食べ物にたとえると、好きなものを中心にしつつ、苦手だけど栄養があるものも少し混ぜておくイメージですね。本は子どもが育っていく過程で、教養や考える力の肥やしとなってくれるもの、いわば、知能や感性を育ててくれる『畑』のようなものと考えるといいかもしれません」
とはいえ、親として読んでほしい本に子どもが興味を示さないとがっかりしてしまうもの。たとえそうだとしても、無理強いしないことが重要とのこと。
「『せっかく買ったのに読まなくてもったいない』とか『面白いのに何で興味ないんだろう』と思う親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、その本はたまたまその子のニーズに合わなかったと考えるべきで、強制して読ませようとしてはいけません。いまは本人にとって必要がなくても、もしかしたらいつか何かのタイミングで手にすることがあるかもしれません。その時まで気持ちを大きく構えておきましょう」
こういう本を揃えよう、子どもが学習しやすいようにリビングの環境を整えようなどと、あまり考えすぎるのもよくないようです。それよりは、子どものペースに合わせて大らかに見守ることが大切なのかもしれません。
(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)