【もはや抜け抜け詐欺?】すぐインプラントはなぜダメなのか?

第3回 インプラントは危険?抜け抜け詐欺に要注意!
「最近の歯医者はどんどん歯を抜きたがります。そして二言目には“インプラント”を勧める…・これはもう抜け抜け詐欺と言えるのではないでしょうか」そう語るのは、話題の書籍『やってはいけない歯の治療』(KADOKAWA)を出版した「サイトウ歯科医院」院長・斎藤正人氏。「子どもを産んでから、歯がもろくなったわ…」とお嘆きのママは、老後にしっかりと歯を残すためにも、まずはここでしっかり、インプラントの怖さについて勉強しておこう!

●抜くことを前提にする歯科医には注意

「まず、“歯を抜く”ことを前提にして治療する歯医者には注意した方がいいと言えるでしょう。歯医者の本来の仕事は“歯を残す”こと。『入れ歯は修整がきかないから…』などとウソをついてインプラントを勧める歯医者はもってのほかです。お金儲け主義である悪徳歯科医の罠に引っかかってはいけません」(斎藤氏 以下同)

そもそもインプラントとは、顎の骨にドリルで穴をあけ、チタン製のネジ状の棒を埋め込み、その上に人工の歯をかぶせるというもの。ここ10年ほどで急速に普及した技術だ。歯科医にとって保険が適用されないインプラントは、1本平均30~40万円ほどの費用がかかり、手っ取り早くお金が稼げる技術であるという。

「私は、自分の歯をインプラントにしている歯科医を知りません。彼らはみな、口を揃えて『入れ歯で十分だ』と言います。もしもインプラントが自分の歯のように噛むことができる夢の技術だとしたら、なぜ自分自身がインプラントにしないのでしょうか? 『骨があるうちにインプラントにしましょう!』と抜きたがる歯科医もいますが、骨があるからこそ、抜かなくても十分治療は可能なのです」

歯の治療

●最悪、奥歯はなくてもいい

奥歯をインプラントにする必要もなく、最悪の場合、奥歯を喪失したままでもさほど問題ないと語る斎藤氏。

「噛み合わせに一番必要な歯は小臼歯です。小臼歯と噛み切る役割を担う前歯が残っていさえすれば十分なのです。奥歯をインプラントにして複雑化すると、口のなかの手入れもしにくくなります。口のなかはなるべくシンプルに…。奥歯は、抜けたまま放置してもさほど問題はありません」

歯の食いしばりなどで、時に凶器ともなり得るインプラントは、高齢者ほど勧められない治療だそう。

「睡眠中の食いしばりなどでインプラントの歯に自分の歯が負けてボロボロになってしまうことがあります。また、一度歯茎に入れたネジの部分は、骨と結合してしまうので、はずすときはドリルで顎の骨を削るしかありません。高齢者にインプラントを勧める歯科医は、まず信じない方がいいでしょう。近年では、インプラント手術中の事故も多発しています。インプラントは最終兵器と考え、その前にまだまだ選択肢があるということを知っておくだけで、今後のあなたの歯の人生も大きく変わるのではないでしょうか」

インプラントの手術件数や、激安を謳う歯科医院には特に要注意。斎藤氏いわく「本当に歯をぬかなければならないケースは希」だという。虫歯がかなり進行し、歯髄まで腐食が進行していても、歯をできる限り残す「根管治療」はまだまだ可能。もうけが薄い「根管治療」を積極的に行う歯科医こそ、本当に信用がおける名医なのかもしれない。

(取材・文/吉富慶子)

お話をうかがった人

斎藤正人
斎藤正人
サイトウ歯科医院院長
1953年東京生まれ。都立日比谷高校、神奈川歯科大学大学院卒業。サイトウ歯科医院院長。歯科保存学、歯内療法学博士。長年「歯を抜かない」を治療方針に掲げ多数の患者を救ってきた。ブログ「抜かない歯医者のひとりごと」主宰。(撮影/吉場正和)
1953年東京生まれ。都立日比谷高校、神奈川歯科大学大学院卒業。サイトウ歯科医院院長。歯科保存学、歯内療法学博士。長年「歯を抜かない」を治療方針に掲げ多数の患者を救ってきた。ブログ「抜かない歯医者のひとりごと」主宰。(撮影/吉場正和)