子どもの抜け毛の原因とは? 横浜労災病院皮膚科部長の齊藤典充先生は言う。
「子どもの抜け毛の多くは、円形脱毛症です。2~3歳など、幼児にも見られます。ストレスがきっかけのことももちろんありますが、原因はそればかりではありません。インフルエンザがきっかけになることや、本人的には思い当たるきっかけがない、原因不明のものが多いのです」(齊藤先生 以下同)
子どもに円形脱毛症ができると、幼稚園や親がストレスを与えているのではないかと心配する人が多いそうだが、自分や誰かを責める必要はないという。
●免疫が自分自身の髪を攻撃して起こる「円形脱毛症」
では、円形脱毛症はなぜできてしまうのか。
「円形脱毛症は、『自己免疫疾患』のひとつといわれており、免疫が自分自身の髪を攻撃してしまうことで起こります。免疫細胞 のTリンパ球が毛根を敵(異物)とみなして攻撃することで、毛根周辺で炎症が起き、毛が抜けるというメカニズムです。ただし、なぜそうなるのか原因はわからない場合が多いのです」
ほかに、全体が薄くなって円形脱毛症ができる場合には、亜鉛などの栄養不足で起こるケースもまれにあるそう。
また、高熱で一時的に消耗し、栄養がとれずに脱毛症になる場合や、ペットから水虫がうつったり、頭皮のしっしんがひどかったりして脱毛症になる場合もあるとか。ただし、いずれもしっかり診断してケアをすれば、心配はいらないという。
「注意が必要なのは、『抜毛症』といって、自分で毛を抜いてしまうパターンです。多くはストレスによるもので、原因の半分は家庭、半分は学校や幼稚園・保育園といわれています。真面目で一生懸命な子などに多く見られ、治療には心のケアが必要になります」
では、治療が必要な脱毛症と、そうでないものの違いとは?
「2~3カ月経てば自然に治る場合は問題ありません。難しいのは、原因がわからない場合、一度円形脱毛症になって治ったと思ったものの、また症状が出て繰り返すことが多々あるということ。円形脱毛症が1個から2個、3個と増えて広がる場合や、繰り返す場合には、皮膚科専門医を受診したほうが良いでしょう」
原因はわからないものの、初期治療で良くなるケースも多いという「子どもの抜け毛」。気になる場合は、悩んだり、自分を責めたりするよりも、やはり早めに専門家に相談したほうが良さそうだ。
(田幸和歌子+ノオト)