●子どもの頃から“説明させる”ことが重要!
「人間とコンピュータとの違いは“感情”。ただし、この感情について、AIもだいぶ学んでいると言われていますよね。やはり人間は感情の動物だと思いますし、もちろんそれが武器でもある。そしてその感情に加え、言葉と抑揚の存在は大きいと思います。だからこそ、将来AIに負けない大人に育てるためにも、小さいうちから、“どんな言葉を選んで、どのような伝え方をしたら相手に伝わりやすいのか”を考えさせるような教育を意識していくと良いのではないでしょうか。これは、身近にいる親だからこそ、小さい頃から一貫してできることだと思います」(小成氏 以下同)
幼いうちから、「言葉にする習慣を身に着けておくことが重要」と語る小成さん。
「まずはお手本として、赤ちゃんの頃から、ママがひとつひとつ言葉にしてあげることが大切ですね。褒める時も、ただ“すごいね”ではなく、“いろんな色を使っているから、見ていて楽しい気分になるね”など、ママがどんなところに感動しているのかを具体的な言葉にして褒める。怒る時も同様で、まずは“私がなぜ怒っているのか”を説明し、息子たちに“なぜこのようなことになってしまったのか”説明を求めます。子どもたちは自分のモヤモヤした気持ちを言葉にしなければならないので、表現力を伸ばすいい訓練にもなったと思います。あとはお医者さんに行った時も“どの部分がどんなふうに痛いのか”母親が代弁せず、子どもに言葉にさせるように心がけていました」
●ママの言葉の力が息子の未来を育む
イェール大+東大に現役でW合格した小成さんの長男は、シャドーイング(英語の音声と同時に発音の練習をする)でトコトン英語力を磨き、中学3年で英語の弁論大会に、高校2年からは、英語ディベート(提示した主題につき肯定側・否定側に分かれて討議する)大会に出場。ディベートには、前出の“言葉&主張力”が必要とあり、まさに幼少期からの小成さんの子育て法が実を結んだと言えるだろう。
「“言葉力や主張力”に対する根強い価値観は、私自身の大学時代の経験が影響しているのかもしれません。20歳の時、スペインで、初海外にして初留学という経験をしましたが、それまでいかに自分が小さな場所にいて、そこでの常識や価値観にとらわれていたのかがよくわかりました。スペインでは、それらがバーンと覆されるような、180度違う考え方ややり方に接して、“しっかりと自分を持たないといけない!”ということを強く感じたのです。海外に行くと、自分の意見が言えてはっきりしている人の方が相手に受け入れてもらいやすいですし、誰とでも仲良くなりやすい。当時の私は典型的な日本人だったので、何を聞かれても“どちらでもいいです”と答えていましたが、それではダメだということを思い知らされました」
“ディベート”は、国際人として外国を渡り歩くにあたり、重要な武器になるという。
「外国の方は、日本人以上に、政治や思想を話し合うのが好きだと感じますし、海外ではいろんな局面においてディベート力が問われるのではないでしょうか。一方日本では、大きな流れからはずれないことをよしとする風潮が根強く残っていますよね。そこにどっぷり浸かっていると、初めて外国に行った時にビックリすることになるので、日本にいながらにして外国の方と意見交換ができるようにしておくことが大切であると考えています。“ディベート”は、主張するだけでなく、他者の視点を踏まえて討論する力も問われるので、そこは幼い頃から親が心がけていくことで、次第に磨かれていくのではないでしょうか」
例え国際人にならずとも、将来AIに負けない社会人になるために、必要不可欠な“言葉力と主張力”。「難しいことはひとつもない!」と語る小成さんの子育てから、学べることはまだまだありそうだ。
(取材・文/蓮池由美子)