●人はクリエイティブであるために学ぶ
「人生にはつらいことや苦しいことがあって当たり前。それを乗り越える努力をすることにこそ生命の輝きがある…」それが哲学者、フリードリヒ・ニーチェの基本となる教え。
ニーチェは、「学びは創造するためにある」とも唱えており、暗記に頼る勉強法だけでなく、主体性や創造力が問われるようになった昨今の日本は、この考え方にようやく追いついてきたようにも思える。
「創りだすことと生みだすことの大切さ、“人はクリエイティブであるために学ぶのだ”という大原則を、親御さんは伝えてほしいと思います。そのためには、何かを生みだしたり、工夫した瞬間に褒めることが大切です。例えば、“お風呂をキレイに早く洗うためにはどうしたらいいと思う?”など、日々の生活において子どもに考えさせるような問いかけをしていく。あらゆる瞬間にクリエイティブであることを求め、子どもが応えた時にはそれを褒める。ゲームをしている時も同じで、勝つためにどうしたらいいかを考えられる子は上達も早いですよね。ゲームや遊びをしている時、子どもは自然とクリエイティブになって いるので、一緒に遊ぶなかで、”今のうまかったね、どんな工夫をしたの?“と問いかけをしながら、親は”工夫=クリエイティブ”であることを理解してもらうように心がけてみましょう」(斎藤氏 以下同)
さらにこんな発展形を加えていくと、子どもの創造力はさらに育まれるという。
「絵を描くときは、”これにタイトルをつけてみよう“とか、テレビを観ているときは、”この番組はこのタイトルだけど、もしも違うタイトルにするならどんなタイトルにする?“など、親御さんが会話を少し工夫するだけで、ディレクターやプロデューサーの仕事を演出できますよね。もう少し発展させて、”このコマーシャルだったら他にどういう作り方があると思う?“などの問いかけを、日々の生活で取り入れることができたら最高。子どもの創造力は自然と育まれるはずです」
また、「こうするべきだ」という抑制は不必要で、何にも捉われない、“自由な精神と自由な心”こそが大切だとニーチェは説く。
「自分がこうしたいという気持ちが、また次の意欲を回復させるのであって、“こうすべき、こうしなきゃ”という凝り固まった考えでは、力が出にくいとニーチェは言っています。勉強も“しなきゃいけないからする”というのでは限界がある。パワーは、“したいからする”時にこそ生まれるものなんですね。自由な精神と自由な心で物事に向かえば、自然と肉体的なパワーが出てくる。こういう時、人はどんなにやりきっても、いくらでもパワーが生まれるものなんですよ」
親は、そのパワーが出てきた瞬間を、褒めて勇気づけることが大切なのだそう。
「例えば、子どもが神経衰弱を何度も繰り返す時などは、まさにこの状態ですよね。ニーチェは“こうすべき”ということから自分を解放して、“どうしたい”という意欲につなげることが大事だと言っています。だからこそ、そんなパワーが出てきた瞬間を、親御さんはぜひとも見逃さないで欲しいですね。それが、例え玩具集めでもなんでもいい。はまりこんでいる時間が大切で、子どもたちは、必ずそこから何かつかむものがあるはずです」
●試練の向こう側に“ちょっといい自分”を想像して頑張る!
ニーチェのキーワードのなかには、“超人”という言葉が存在するが、これは“人間を乗り越える”という意味を指す。「弱い自分を乗り越えてもっと強くなろう!」それこそが、ニーチェが伝えたいメッセージだ。
「超人に近づくためには、“お互いを高め合うことができる友だち”の存在も大切になります。良き友ができれば、その友だちに対して張りのある自分を見せたくなりますし、互いに切磋琢磨し合うようになりますよね。1人だけの力ではなく、友人関係で高めあっていけば、より一層のパワーが発揮されるようになります。ライバルと戦って負けたとしても、“自分はこの人と戦えてよかった”“負けても清々しい”と思えるようになったら素晴らしい。憧れの友を越えていこう、今の自分を乗り越えていこう、その向こう側には、今の自分ではない、もうちょっといい自分がいるはずだと思って頑張る…それがニーチェが唱える“超人”という意味です」
苦しいことも頑張り続ければやがては楽しくなる、現状の自分を乗り越えてもっと成長しよう、もっともっと強くなるために頑張ろう! ニーチェは、人間らしく生きることのすべてを教えてくれる。
(取材・文/蓮池由美子)