「本来子どもは感情で行動するため、求める行動をうながすためには大人も行動で示すことが必要です。ところが、学校では教育的な知識に沿って教えることが多い。さらに、言葉で叱りつけることもあります。すると、子どもにとって嫌な場所になってしまいます。子どもは最初は良い子を演じてその場を乗り切ろうとしますが、その我慢が限界になると問題行動を起こすようになります」
こう話すのは心療内科医の赤沼侃史(あかぬまつよし)先生。学校という機関自体、多くの子どもを管理する以上、子どもの心に沿った対応は難しいものなのだそう。
また、担任の先生が変わるタイミングで問題行動を起こす子どもは少なくないという。それはなぜ?
「先生によって、子どもを押さえつけようとするかの度合いが異なるからです。例えば、ベテランの先生は経験から子どもを許せる範囲が広いため指導も緩いのですが、若い先生は経験が少ないため、専門学校や大学で教わったことを、子どもに押し付けてしまい締め付けが厳しいことがあります。すべての先生がそうではありませんが、経験の浅い先生に変わったことが問題行動を起こす引き金になるケースもあるようです」
また、厳しい先生が押さえつけていたことで、その場は収まっていたが、おとなしい先生に変わった途端、良い子を演じていた子どもたちが前任の先生で受けていた負担が問題行動として表れてくることもあるという。
●学級崩壊はなぜ起こるのか
ちなみに、クラス内で問題行動を起こしている子どもにほかの子が同調してしまうことはあるの?
「心がつらい子どもが、ほかの生徒の問題行動を見て真似ることはあります。問題とされる行動は、子どもが現状に対して不満などを抱えているからこそ起こるのです」
では問題行動をする子どもが増えてクラスが存続できなくなった学級崩壊については、押さえ付けの厳しい先生の影響を多くの生徒が受けていたということになるのだろうか?
「力で押さえつけようとした指導や締め付けを負担に感じ、その逃げ場として問題行動を起こす子どもが増えたのでしょう。ですが学級崩壊は必ずしも学校だけの問題ではなく、子どものつらくなった心を回復しようとする親の姿が見えないクラスであることが一番の問題です」
学級崩壊を起こせば、保護者が学校を責めることもある。すると学校はますます締め付けを行い悪いサイクルに陥ってしまうという。まずは子どもを守る保護者の対応の見直しが必要なのだそうだ。
(ノオト+石水典子)