日本では、男性の家事・育児参加が進んでいません。6歳未満児のいる日本人男性の家事・育児時間は、1日平均約1時間 (※1)。欧米諸国の3分の1程度です。また、男性の育休取得率は、わずか1.89%(2012年 ※2) 。しかも、取得期間は約4割が5日未満で非常に短いです。ちなみに、男性の家事・育児時間が長いほど、第二子以降の出生率は高まる傾向があります (※3)。
この背景には、日本人の伝統的な価値観、男女の役割分担意識の強さという問題もありますが、男性の労働時間が長いという問題もあります(※4)。近年、男性の仕事時間は増えています 。また、子育て世代である30代の男性では、5人に1人が週60時間以上の長時間労働をしています。この割合は他の年代よりも高いです。男性の家事・育児への関わりづらい状況であることが、女性が働き続けることを難しくし、少子化の一因にもつながっているのです。
このような現状を踏まえ、2010年に施行されたのが「改正育児・介護休業法」。同法では、男性の育休取得を促進する制度などが盛り込まれています。
制度のひとつ、「パパ・ママ育休プラス」では、父親も母親も育休を取る場合は、取得期間が従来の1年から1年2カ月へ延長されます。また、男性が取得しやすいように、取得期間に融通が利くようにもなっています。
例えば、母親が先に育休を取り、次に父親が育休を取って合計1年2カ月とする、というパターンのほか、母親の産休中(産後8週間以内)に父親も育休を取り、父親はいったん仕事に戻って、1年2カ月の間に再び育休を取るというパターンも可能です。
ところで、育休取得中は収入が減ります。特に、男性が育休を取る場合、その影響は大きいでしょう。そこで政府は、育児休業給付金を引き上げるために、「雇用保険法」を改正しました。今年4月から、育休開始から6カ月の間は、育休前の賃金の67%が支給されるようになりました(従来は50%)。また、厚生労働省「労働時間等見直しガイドプラン」では、長時間労働の抑制や有給休暇の取得を促進しています。
今の20~30代は、男性も女性も同じように進学し、社会でも対等に働いている方が多い世代です。昔ながらの男女の役割分担意識は弱まり、育児や家事などの家庭生活に関心の高い男性も増えています。実は、育休を取りたかったけれど、職場で取得しにくい雰囲気があって踏み切れなかった…、という方もいるのではないでしょうか。
そういった風潮を変えるために、最近では地方自治体のトップを務める男性で育休を取る方も登場しています。自治体のトップには緊急時の判断も求められるため、育休取得には賛否両論あるでしょう。けれど、社会的に影響力のある方が、風潮を変えていくことには大きな意義があります。男性の家事・育児への関わりを増やすには、制度を用意するだけでなく、世の中の雰囲気作りも重要です。