毛深い・毛深くないといった体質は、遺伝的要因が大きい気はするけれど、そのほかに、子どもを毛深くしてしまう要因はあるのだろうか。よしき皮膚科クリニック銀座の吉木伸子院長は次のように指摘する。
「例えば、アトピーなどの肌トラブルで処方されることも多い経皮ステロイド剤など、一部薬品によって発毛が活性化することは、一時的にはあります。しかし、通常は薬をやめると戻りますし、医者が必要で処方するものは、きちんと指示通り使えば心配は不要です」(吉木先生 以下同)
「ムダ毛を剃ると、かえって毛深くなる」と聞くことがある。それは本当だろうか。あるいは、毛の断面が大きくなり、毛が太く見えるだけなのだろうか。
「ムダ毛を剃ることによって毛深くなる人も、確かにいます。しかし、そのメカニズムはわかっていないのです」
また、ネット上には「肉や卵など、動物性たんぱくを摂りすぎると、男性ホルモンが促進されて毛深くなる」「ニラやネギを食べすぎると毛深くなる」「糖分、塩分のとりすぎで~」などと、「毛深くなる」と言われている食べ物も多数ある。これって本当?
「『毛深くなる』といわれる食べ物に関する噂は、いずれも俗説です。食べ物と毛深さは関係ないことを覚えておけば大丈夫です」
●「睡眠時間」が「毛深さ」に関係アリ!?
ほかに、意外と知らない、実は子どもを毛深くさせてしまうかもしれない行為はあるのだろうか。
「毛深さと直接どの程度関係するかまでは断定できませんが、睡眠中に分泌されるメラトニンは、二次性徴を抑制する作用があります。つまり、寝不足→メラトニン不足→性的早熟→早く毛深くなるということが起こりうるといえます」
「睡眠時間」と「毛深さ」の関係は、大人になってからの話ではなく、第二次性徴の時期との関係だという。
「思春期になると、性ホルモンの影響で誰でもある程度体毛が濃くなります(第二次性徴)。第二次性徴が訪れる時期は、睡眠時間と関係しており、睡眠時間が長く、メラトニンが多く分泌されている子どもは、第二次性徴の訪れが遅いという傾向が見られます。逆に、睡眠時間が短いほうが、その訪れが早くなるということです」
つまり、寝不足に陥っていたり、スマホやパソコンの見すぎで脳のリズムが乱れたりすると、早い年齢で第二次性徴を迎え、毛深くなってくる可能性があると推察されるということだ。この点について、吉木先生は次のように警鐘を鳴らす。
「不規則な生活は毛深さに限らず、多くのトラブルを引き起こします。いずれにしろ、生活を整えることはムダ毛問題だけでなく、健康にも美容にも非常に大切です」
後天的に毛深くなる要因として、医学的・科学的に明らかになっているものはない。不要な情報に惑わされるのではなく、規則正しい生活を心がけることがまずは大切なのかも。
(田幸和歌子+ノオト)