インフルエンザ・ノロウイルスが流行する冬。ウイルスや菌の消毒・除菌方法を知ろう

インフルエンザ・ノロウイルスが流行する冬。ウイルスや菌の消毒・除菌方法を知ろう

食中毒というと気温の高い夏におこりやすいイメージがありますが、冬はノロウイルスによる食中毒が増えるため1年を通しておきています。また、人の免疫機能が低下し、低温・低湿度を好むウイルスが多いことから、インフルエンザをはじめとする感染症も増える季節となりますので、体調を崩さないように正しいウイルスや細菌の消毒・除菌方法を知って対策を行いましょう。

まずは手洗い・うがい

ウイルスや細菌のついた手で目や鼻、口などの粘膜を触った場合。咳やくしゃみなどによる飛沫や、おう吐物などが粒子となり、空気中から体内へ運ばれることが感染の原因となります。帰宅時や食事前にはうがい・手洗いを徹底し、トイレの後や料理前にも手洗いを忘れないようにしましょう。
水が使える場合には手洗い・うがいをすることが、基本的な感染症対策となります。手に汚れがついているとアルコールでの除菌効果が落ちますので、アルコールなどの消毒液は手洗いと組み合わせて使用したり、手洗いができない場所で補助的に使用したりするものと考えましょう。

手洗い

ノロウイルスとよく似たネコカリシウイルスをつかった実験(※1)で、手洗いなしと比べてウイルスがどれくらい残るかを調べたところ
・手を流水で15秒水洗いすると100分の1
・ハンドソープで10秒または30秒もみ洗いした後、流水で15秒すすぐと1万分の1
・ハンドソープで10秒もみ洗いした後、流水で15秒すすぐことを2回くり返すと100万分の1
という結果となりました。
※1 Norovirus の代替指標としてFeline Calicivirus を用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討

ハンドソープを使った手洗いはとても効果が高いことがわかりますが、すみずみまで洗わないと指や爪の間にウイルスや細菌が残ってしまいますので、正しい手洗いのしかたを覚えておきましょう。

正しい手洗いのしかた

水で手をぬらしてからハンドソープをつける
手のひらをしっかりこすり合わせ、泡立てる
手のひらをあわせて指をかみあわせ、指の間を洗う
手のひらと手の甲をあわせて指をかみあわせ、手の甲を洗う
手のひらにもう一方の手の指先を立て、指先と爪先の内側を洗う
片側の手で親指をつつみ、親指を洗う
手首をあらう
流水で泡を洗い流す

可能であれば、家族でタオルは共有せずペーパータオルなどを使うのが理想です。
特に、家族の誰かが感染症にかかっている場合には、別々のタオルを用意するか、ペーパータオルを使うようにしましょう。

うがい

うがいは日本独自の習慣で、どのようなメカニズムで風邪や感染症を予防するかはわかっていないのですが、京都大学の研究(※2)では、水でうがいをすることで風邪の発症率が4割少なくなったという結果があります。なお、この研究ではうがい薬を使った場合には、うがいをしない場合と比べて風邪の発症率がかわらなかったため、水だけでうがいをするのがよいようです。
※2 京都大学環境安全保健機構 産業厚生部門 水うがいで風邪発症が4割減少

正しいうがいのしかた

水を口にふくみ、正面むいたままブクブクと口の中を洗い流す
もう一度水をふくみ、顔を上にあげてガラガラと15秒ほど喉を洗う
ガラガラうがいを2-3回くり返す

アルコールでの除菌

アルコール(エタノール)はアレルギーが無い人であれば手指にも使うことができます。ただし、一部のウイルスや細菌に効かない場合や、材質によっては家具などを痛めることがありますので、注意点を確認しておきましょう。

アルコール除菌

アルコールは多くのウイルス・細菌に有効ですが、ノンエンベローブウイルスと呼ばれるウイルスや、芽胞と呼ばれる丈夫な層をつくる細菌には効き目がありません。

一般的に感染しやすく、アルコールが効かないウイルス・細菌としては、下記のようなものがあります。

ノロウイルス
ロタウイルス
エンテロウイルス(手足口病の原因となるウイルス)
セレウス菌
ボツリヌス菌
ウエルシュ菌

ノロウイルスやロタウイルスは10~100個といったごく少量のウイルスが体内に入るだけで感染することがあります。(ただし、ロタウイルスは主に0~6歳ごろの乳幼児がかかり、5歳までにほぼすべての子どもがかかる病気です。)感染した疑いがあったり、診断を受けたりした場合には、アルコールでなく塩素系漂白剤などで除菌を行うようにしましょう。

逆にとらえると、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス、芽胞を作らない多くの細菌にはアルコールによる除菌効果がありますので、手洗いと併用して感染を予防しましょう。
なお、アルコールの除菌効果が高いのは、濃度が70~80%の場合となります。水で濡れているところにアルコールをかけると薄まってしまいますので、乾燥した状態で使うようにしましょう。

アルコールが使えないもの

アルコールは家具や家電を劣化させないと思われているかもしれませんが、意外に使えないものが多くあります。
木材の家具は表面を塗装していますが、アルコールによって塗装が変色・劣化をしてしまうことがあります。同様にフローリングも表面のワックスが変色して白くなることがあります。
また、スチール製品も表面に塗装してあるものがあり、こちらにも使うことができません。革製品もアルコールによって油分がうばわれ劣化してしまいますので気をつけましょう。

プラスチックも種類によっては変色・劣化してしまいます。見た目ではわからないかもしれませんが、プラスチックにはたくさんの種類があり、それぞれアルコール耐性は異なります。例えば、アクリルのパネルやテレビ、パソコンの液晶画面などには使えません。
アルコール耐性がある素材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)があり、アルコール消毒液の容器としても使われています。アルコール対応でない容器は溶けてしまいますので、別の容器に詰めかえる場合には対応しているのものか必ず確認しましょう。

いずれも、数回のふき掃除では変化はないかもしれませんが、何度も使用するうちにだんだんと劣化することがありますので注意が必要です。説明書があればアルコールに対応している製品かを確認をしてみてください。
また、アルコールは燃えやすく、スプレーしたアルコールに引火して燃え広がることがありますので、火の近くでは絶対に使わないようにしましょう。

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