● 熱が高いと脳への影響は?
「よく“熱が高いとバカになっちゃう”、とか言いますけどあれは嘘ですね(笑)。みなさん熱を敵のように思っていますが、実は体温を高く保つことで、一生懸命外敵と戦っているんです。外から入ってきたウィルスや菌の繁殖を抑えたり、自分の免疫機能を高めるために頑張ってる味方なんです。高熱で脳の機能に影響が出る場合は、背後に髄膜炎や脳炎などの怖い感染症が関わっていたり、熱中症で高温の環境下で脱水したり、温度中枢のコントロールを失ってしまった場合です。実際には熱自体で頭がやられることはほとんどありません」(手塚氏 以下同)
実際、死に至るような熱中症になると、どんなに冷やしても熱が全然下がらなくなるそうだ。今の季節は非常に気をつけたいところだ。
● 男の子の都市伝説
またよく聞く都市伝説的に「男の子の熱が高くなると生殖機能がなくなる」なんて言われるが、これも嘘だろうか?
「通常、精子は毎日作られているので問題ありません。男子育児中のママなら分かるかもしれませんが、睾丸の位置は、上がったり下がったりしているんです。熱が高いときダラ〜〜っとしてますよね。逆に気温が寒いとスッと上がって体の近い部分まで上がってきます。つまりラジエーターのような役割を睾丸が果たして温度を調節しているんです。なかなかうまくできています」
女の子にはこのような温度調節機能がないが、特に問題はないという。
さらによく聞く都市伝説的に「男の子がおたふく風邪にかかると生殖機能がなくなる」なんて言われるが、これも嘘だろうか?
「成人になってから、男性でおたふく風邪にかかった場合には、副睾丸炎という合併症になり、不妊症になってしまう場合もあります。そのため今は早い段階で2回ほどおたふくかぜのワクチンを接種するようにお願いしています。ワクチンを2回接種しても、おたふく風邪になる可能性はゼロではありませんが、重い合併症などに悩まされることはありません。さらにおたふく患者さんの1000人に1人は難聴になって聴力が戻らなくなったり、髄膜炎などで入院する場合もあります。こちらは女の子でもかかることがありますので、注意が必要です」
なかなか軽く侮れない病気のようである。学校や幼稚園でかかってくればいいや、そう思う親も多いかも知れないが、防ぐことができる予防接種があるので、ぜひ接種しておきたい。“熱は敵ではなく味方”。熱からいろいろ怖い病気も分かることがあるので、焦らず子どもの様子を観察しよう。
(取材/文 谷亜ヒロコ)
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