●授業参観の日、子どもは興奮状態。いつもしっかりしてる子がはしゃいでしまっても問題なし!
「授業参観の日というのは、どんな子でも朝からソワソワ興奮状態です。特に低学年の子はハイテンションでいつもと全然違います。やっぱり嬉しいんですよね。先生たちも緊張しています。そんな日なのです」(親野先生 以下同)
いつもと違う日だからこそ、見えてくるものがあるという。
「なかには、普段とまったく違った行動をしてしまう子もいます。私が教師をしていたとき、ある女の子が、いつもはしっかりしている子なのに、お母さんを見るなり突然興奮してはしゃいでしまったことがありました。いつもしっかりしている子なのですが、お母さんはとてもショックを受けていました。いつもこうなのかと思ったのでしょう」
授業参観は誰もが興奮する特別な日ですから、もし子どもが落ち着かない様子でも、ここで決してお子さんを叱らないでほしいと、親野先生は話します。
「私は、その子のお母さんに“いつもはしっかりやってますよ。お母さんが来てくれて嬉しいんですよ“と言いました。なぜなら、その子が家で叱られると思ったからです。いつもはしっかりやってるのですから、それは可哀想です。翌日、その子に聞いてみたら、叱られなかったそうです」
さらに、お母さんからの連絡帳にはこんなことが書かれていたそう。
“帰ったらどうやって叱ってやろうかと思いましたが、先生のおかげできつく叱らずにすみました。少したって冷静になったら、あんなに喜んでくれたのが可愛く思えました。子どもにはこう言いました。お母さんを見て喜んでくれたんだって? ありがとう。でも、あなたがはしゃいだので、お母さんは冷や汗をかいて気を失いそうになったよ…”
「こういう親子関係なら大丈夫。子どもは立派に育ちます。なかには、逆のケースもあって、いつもは勉強に集中しないで、友だちにちょっかいを出してばかりなのに、参観日になると突然しっかりする子です。こういう子は、それほど多くはありませんが時々いるのです」
●授業参観で注意すべきはむしろ「親の前だけ良い子」
普段、学校で問題行動が多い子が授業参観で親の前では良い子。実は、こういうケースこそ要注意だという。
「こういう子は、親を怖がっていることが多い。親が口うるさかったり、厳格すぎたりするため、彼らの多くは、家で子どもらしくふるまえずとても緊張して過ごしているので、学校で息抜きしているんですね。だから、一番怖い存在の親が授業参観に来ると、いい子になるのです」
さらに、こういう親は、わが子の現実に気づいていないことが多いそう。
「教師が“お宅のお子さんはいつもこんなで…”と、実際の様子を話しても、“ウチではしっかりしてますし、学校でもしっかりやってますよね”と、なかなか信じてもらえません。そういうケースが実際にあるのです」
●家は、“くつろげる安らぎの場”になっていない子どもは結構多い
本来、家というのは“くつろげる安らぎの場所”でなければならないという。
「家がくつろぎの場所になっていない家庭がけっこうあるのです。親の愛を実感できず気持ちが満たされないために、学校でその反動が出てしまいます。こういった子は、後々さらに大変になります」
思春期以降に爆発してしまい、大問題を引き起こしてしまったり、反抗期以上の反発をしてしまうケースも。さらにそこでも抑えられてしまうと、大人になってさらなる問題を起こす危険性も。後になれば後になるほど大変な状況になるからこそ、気を付けてほしいという。
「家は、子どもにとっては子宮の延長のような安らぎと癒しの場でなければなりません。家で息抜きして充電できてこそ、外で頑張れるのです。やるべきときに、きちんとやれる子であれば大丈夫です。それに、参観日に親の姿を見て舞い上がって喜んでしまうくらいの方が、子どもとしては健全ですよね」
親の前でお子さんがありのままの姿を見せられる親子関係が何より大事。ぜひ、お子さんの授業参観の際は、そんな思いも巡らせながら見守ってあげましょう!
(構成・文/横田裕美子)