アルコール中毒の治療
急性アルコール中毒はできるだけ早くアルコールを体の外に出すことが重要です。
一方、慢性アルコール中毒(アルコール依存症の治療)は、お酒を一滴も飲まない「断酒」が基本となります。
それぞれの具体的な治療法は以下のとおりです。
急性アルコール中毒
①軽症の場合
嘔吐した際に気道に吐物が入らないように横向きに寝かせます。
意識がある場合は水分摂取をすすめ、意識がぼんやりしている場合には点滴をして、アルコールの排泄を促します。自力でトイレに行けない場合は、尿道バルーンカテーテルとよばれる管を尿道に入れます。
体温が下がっている場合もあるため、寒いとの訴えがある場合は毛布などで体を温めます。
②重症の場合
気管挿管や人工呼吸などをおこない気道を確保します。
体の外へアルコールを出すために大量の輸液をおこない、尿道バルーンカテーテルを入れて尿量の観察をおこないます。脱水や低血圧、低血糖などの症状がみられる場合は、それぞれに応じた治療をおこないます。
慢性アルコール中毒(アルコール依存症)
慢性アルコール中毒(アルコール依存症)の治療では、お酒を完全にやめることが必要ですが、自分の意志だけに頼ってやめようとすると、なかなかうまくいきません。断酒を実現するため、薬物療法・精神療法・自助グループへの参加(アルコホーリクス・アノニマス、断酒会)などをおこないます。
①薬物療法
飲酒後に不快症状を出現させる抗酒薬や飲酒量を減らすための薬、アルコール離脱症状に対して使われる抗不安薬や睡眠薬などがあります。
②精神療法
精神療法には、精神科医や臨床心理士による個別や集団でのカウンセリングや、認知行動療法などがあります。
認知行動療法は、考え方の偏りに気づいて物事のとらえ方を変えることにより、行動を変える方法です。最終的に飲酒行動を変えていくことを目指します。
③自助グループへの参加
自助グループは「アルコールをやめたくてもやめられない」といった同じ悩みを抱える仲間が集まり、互いに支えあうことで困難を乗り越えることを目的とした集まりです。
自分の体験談を語ったり人の体験談を聞いたりすることが、断酒を継続する助けとなります。
アルコール中毒になりやすい人・予防の方法
若年者、女性、高齢者、飲酒後に顔が赤くなるタイプの人は急性アルコール中毒になりやすいです。アルコールの分解が遅いのでアルコールの血中濃度が下がりにくく、リスクが高まると考えられています。
また、未成年から飲酒している人、アルコール依存症の親を持つ人、うつ病などの精神疾患をもつ人は、慢性アルコール中毒(アルコール依存症)になりやすいといわれています。
急性アルコール中毒や慢性アルコール中毒(アルコール依存症)を避けるために、お酒を飲む際には以下を心がけましょう。
①短時間で多量にお酒を飲まない
急性アルコール中毒のリスクを高めます。適度な飲酒を心がけましょう。
②20歳を過ぎてから飲酒する
脳の発育に悪影響を及ぼし、若年者の飲酒はアルコール依存症になる危険性を高めます。
③飲酒前または飲酒中に食事をとる
血中のアルコール濃度が急激に上がることを防ぎ、お酒に酔いづらくします。
④他人へ飲酒を強要しない
アルコールの吸収や代謝には個人差があるため、それぞれのペースを守ることが大切です。
⑤飲酒の合間に水やお茶を飲む
アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにします。水などで割ってアルコール度数を低くしたり、少しずつ飲むなどの工夫もできます。
⑥不安や不眠解消のためにアルコールを飲まない
不安や不眠の解消のために飲酒を続けると、アルコール依存症になるリスクが高まります。またアルコールにより眠りが浅くなり、睡眠リズムが乱れる原因となります。
⑦1週間のうち、飲酒しない日をつくる
毎日飲んでいると飲酒が習慣化し、アルコール依存症の発症リスクを高めます。継続しての飲酒を避けるため、お酒を飲まない日をつくるようにしましょう。
アルコール性肝線維症
肝臓がん
脂肪肝急性膵炎慢性膵炎心不全高血圧脳梗塞うつ病認知症痛風脂質異常症
胎児性アルコール・スペクトラム障害
参考文献
急性アルコール中毒|厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコールと依存|厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコール酩酊|厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコール依存症への対応|厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコール依存症の薬物療法|厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコール依存症の心理
アルコール依存症者の自助グループ|厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコール依存症の危険因子|厚生労働省 e-ヘルスネット
厚生労働省 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
厚生労働科学研究成果データベース アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン
配信: Medical DOC
関連記事:
