熱狂はどこへ『昭和100年!激動のあの時はスゴかった』/テレビお久しぶり#143

熱狂はどこへ『昭和100年!激動のあの時はスゴかった』/テレビお久しぶり#143


「テレビお久しぶり」 / (C)犬のかがやき
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『昭和100年!激動のあの時はスゴかった』(BS-TBS系)をチョイス。

■熱狂はどこへ『昭和100年!激動のあの時はスゴかった』

昭和45年生まれである俳優・八嶋智人が毎回ゲストを呼び、激動の時代を振り返る番組、『昭和100年!激動のあの時はスゴかった』。この2025年は、昭和100年にあたる年なのだ。まだ100年か、それとも、もう100年か。羽田・成田空港の歴史や、海外スターの来日など、当時の貴重な映像資料によって、熱狂がよみがえっていく。今回のゲストは、昭和を彩った元おニャン子クラブ・新田恵利だ。

これは非常に興味深い番組だった。平成生まれの私からすると、昭和というものには、独特のあこがれのようなものがある。平成は、存分に経験したうえで懐かしんでいるのだが、昭和に関しては、よく知らない。私の生まれる前に始まり、生まれる前に終わったのだ。しかし、周りの大人たちはみな昭和生まれ。だから、経験していないのに、すごく身近なようにも感じられる、独特の距離感をもって、私は昭和と向き合っている。

番組内で個人的に印象的だったのが、『荒野の用心棒』の大ヒットによる銃のブーム。本作が日本公開された年にはモデルガンが飛ぶように売れたとのことなのだが、令和にこういったことは起こりえないだろう。ちいかわが流行ってちいかわのグッズが売れるのはあるけれども、たとえば『トップガン』のヒットでMA-1が流行るといったことはない。これはなぜなのだろう。時間の経過やネットの発達によって、皆がすでにモノをよく知っているからなのかもしれない。昭和の人間はモノを知らないと言いたいわけじゃないが、作品そのものにまっすぐアクセスするという素直な動線が熱狂を生んだんじゃないかと勝手に想像する。今では、作品を見ずとも、作品についていくらでも知れてしまう。娯楽があふれていて、ひとつの映画に熱狂するような時代でもない。スワイプをして次へ行く時代だ。

とはいえ私は、このスワイプ時代もそれなりに楽しく生きている。そんじょそこらの奴らに、スワイプの量で負けることはない。スワイプによって時間を溶かし続け、俯瞰と冷笑だけを獲得した私だからこそ、昭和の熱狂には心惹かれるものがあるのだろう。

さて、最後にちょっとした余談なのだが、番組内でも参照されているような、昭和の人々を写した白黒の記録映像なんかを見ていると、彼らの目に映る風景も白黒であるように錯覚してしまう。もちろん、実際の彼らには色が見えていたはずだ。しかし、私の目からは、白黒の人々として認識することしかできない分、彼らの目に色が映っていることを、どうしても想像することができない。理屈では分かるのに、納得ができない、というカンジなのだ。モノクロは、モノクロでしかなく、自らの脳内でカラーを当てはめるという能力が、私にはないワケなのだ。分かってくれる人がいたりするでしょうか。

■文/城戸

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