下痢の時に食べてはいけないものとは?Medical DOC監修医が下痢を催す原因・下痢の時に食べてはいけないもの・下痢を催した際におすすめの食べ物・注意点や対処法などを解説します。
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監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
「下痢を催す」原因と対処法
下痢とは軟便や水様便で排便回数が増加する状態のことです。急性下痢症と慢性下痢症に分けられます。急性下痢症は突然発症し、慢性下痢症は下痢の症状が4週間以上続いている状態です。
下痢を催すメカニズムは腸の働きが関与しています。腸は収縮と弛緩を繰り返す、ぜん動運動をして腸の内容物を移動させます。このぜん動運動が異常になったり、腸内での水分調節の働きが異常になることが原因です。メカニズムによる分類はぜん動運動性下痢・滲出性下痢・分泌性下痢・浸透圧性下痢などです。
急性下痢症は食生活や腸管感染症が原因となることが多く、慢性下痢症は炎症性腸疾患や過敏性腸症候群などが原因で起こります。
急性下痢症の場合は自然に治癒することが多いですが、慢性下痢症の場合は原因疾患の治療が必要になります。
感染性腸炎
感染性腸炎は細菌やウィルスの感染により発症し、ほとんどの場合下痢症状が起こります。
主な感染源は食品や水・人から人への接触感染です。
症状は細菌やウィルスの下痢・発熱・腹痛・嘔吐などの症状が現れる場合が多いです。
止瀉剤(下痢止め)は病原菌が排出されず、体内に留まり症状の悪化や治りが遅くなるため使用しません。整腸剤などの投与で腸内環境を回復させます。
ノロウィルス腸炎・ロタウィルス腸炎・カンピロバクター腸炎・腸管出血性大腸炎(O157腸炎)などが代表的な腸炎です。
多くの場合、数日で症状は治まり自然治癒しますが、症状が強い場合は一般内科や消化器科を受診しましょう。
乳糖不耐症
乳糖不耐症とは牛乳や乳製品に含まれる乳糖を体内で分解できないために下痢や腹痛や腹部膨満を起こします。
牛乳の摂取を控える、普通牛乳から乳糖を減らした牛乳に変えることをおすすめします。
牛乳や乳製品を摂った後に下痢や腹痛や腹部膨満の症状がある場合は消化器科を受診しましょう。
食物起因性
適量であれば問題がない食べ物でも、大量に摂取することで下痢を催す原因となる食べ物があります。
カフェインやアルコール・キシリトールやソルビトールなどの甘味料の大量摂取や・高脂肪食は下痢を起こす場合があります。過剰に摂取しないように注意しましょう。
摂取を控えても下痢の症状が続く場合は消化器科を受診しましょう。
過敏性腸症候
過敏性腸症候群は慢性的に下痢・便秘・腹痛などの症状が繰り返す病気です。通常、大腸や小腸に異常はありません。
原因は不安や緊張などの精神的ストレスや腸内細菌が関わっています。また、感染性腸炎発症後で、過敏性腸症候群を発症するリスクが高まります。感染性腸炎発症後に過敏性腸症候群を発症する危険因子は、ストレス・うつ・女性・喫煙・感染性腸炎の罹患期間が長いことなどです。
食事や生活習慣の改善で症状の軽減が期待できます。欠食せず、規則正しく食事を摂取し、過敏性腸症候群の症状を起こしやすいものの摂取を控えましょう。
症状を起こしやすいものは、脂質が多い食べ物・カフェイン・香辛料・牛乳などの乳製品です。
欧米では「FODMAP」を多く含む食品を避けることが症状を軽減すると報告されています。
生活に支障をきたすほどの慢性的な下痢がある場合は、早めに消化器科を受診しましょう。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は慢性的に繰り返し消化管に炎症や潰瘍が発生する病気の総称です。
一般的に潰瘍性大腸炎とクローン病を指します。
再燃と寛解を繰り返す慢性疾患です。
原因は解明されていませんが、遺伝的な因子・環境因子・腸内環境などが関わっているといわれています。
症状があるときは食べ物の選び方や生活習慣にも気をつけましょう。
食生活では、脂質が少ない・刺激が少ない・繊維が少ないものを選び、アルコールなどを避け、バランスよく食べることがおすすめです。
ストレスをためないようにし、十分な睡眠や休養をとりましょう。喫煙はクローン病のリスク因子になるといわれているため、禁煙をしましょう。
下痢・腹痛・血便などの消化器症状や発熱・倦怠感や体重減少などの症状があれば早めに消化器科を受診しましょう。
下痢の時に食べてはいけないもの
下痢の時に食べてはいけないものは、腸に負担がかかる食べ物です。刺激物や脂質が多いものや繊維の多いものは控えましょう。アルコールやカフェインの大量摂取も下痢の原因になるため、症状がある場合は摂取を控えることをおすすめします。
刺激物
香辛料・酸味が強いもの・濃い味・炭酸飲料などは胃腸を刺激し負担がかかります。
胡椒・わさび・辛子などの香辛料、酢の物・レモンなどの柑橘類などの酸味が強いもの、食塩や醤油などの調味料、炭酸水やジュースなどの炭酸飲料を控えましょう。
脂質が多いもの
脂質が多いものは消化吸収に時間がかかり、胃腸に負担がかかります。
揚げ物・脂質が多いバラ肉やうなぎ・カレーやラーメンや菓子類などを控えましょう。
腸内で発酵するもの
過敏性腸症候群では腸内で発酵する食べ物は下痢を催しやすいです。
小麦・豆類・とうもろこし・たまねぎ・牛乳・ヨーグルトなどを控えましょう。
アルコールやカフェイン
アルコールやカフェインの大量摂取は下痢を催す原因になります。
日本酒やビールなどのアルコール飲料やコーヒーやエナジードリンクなどカフェインを多く含む飲み物を控えましょう。
消化に時間がかかるもの
食物繊維が多いものや固いものは消化に時間がかかり、胃腸に負担をかけます。
ごぼうやたけのこなどの野菜・海藻・きのこ・玄米などを控えましょう。
配信: Medical DOC