S状結腸軸捻転の治療
S状結腸軸捻転の内視鏡整復が不可能な場合や腸管壊死、穿孔、腹膜炎を伴う場合には、緊急手術の適応となります。手術の基本術式はS状結腸切除術ですが、人工肛門を造設するかどうかは、患者さんの年齢、栄養状態、併存症の有無、腹膜炎の程度、便の貯留状況などを考慮し、手術時に判断します。全身状態が悪く、腸管を吻合してもうまくつながらない(縫合不全)可能性が高いと判断される場合など、どうしても人工肛門造設が必要になることがあります。一方、内視鏡整復が可能な場合でも、再発率が18~91%と高いため、繰り返す場合などでは待機的に手術を行うことが望ましいとされています。
待機的手術は主にS状結腸切除術が標準とされますが、患者さんの高齢や併存疾患の多さから、手術の適応については慎重な判断が必要です。また、内視鏡による整復後の患者さんの83%が2年以内にほかの疾患で死亡するという報告もあり、手術の適否については患者さん本人と家族の希望を十分に考慮する必要があります。人工肛門造設の判断も患者さんの生活環境や希望を踏まえ、個別に検討することが適切です。
最近では、低侵襲手術として小開腹による腸管切除や吻合、腹腔鏡下手術、特に単孔式手術の報告も増えています。術後には、ほかの部位の結腸で軸捻転が発生する可能性もあるため、注意深いフォローアップが必要です。また、緊急手術を含めた手術戦略の決定には、患者さんの全身状態や手術リスクを総合的に評価し、個別の症例に応じた対応が求められます。
S状結腸軸捻転になりやすい人・予防の方法
S状結腸軸捻転の誘因には、器質性因子と機能性因子の2つがあります。器質性因子には、S状結腸過長症や巨大結腸症、手術によるS状結腸間膜の瘢痕短縮などが挙げられます。一方、機能性因子としては、長期臥床、慢性便秘、抗コリン作用薬など腸管の蠕動を抑制する薬剤の使用、低カリウム血症などが考えられています。
再発を繰り返す症例に対する予防的腸管切除の適応については、医師のみで判断することは難しく、患者さん本人や家族の希望を取り入れながらケースバイケースで対応することが重要です。患者さんの状態や背景を総合的に考慮し、適切な治療方針を決定することが求められます。
関連する病気
巨大結腸症
ヒルシュスプルング病
腸管狭窄
参考文献
五井孝憲, 森川充洋. S状結腸軸捻転症. 成人病と生活習慣病. 2017;47(12):1567-71.
水野英彰, 白山才人, 堀合真市, 橋本佳和, 阿部展次, et al. 結腸軸捻転症に対する緊急内視鏡
治療 (S状結腸軸捻転症を中心に). 消化器内視鏡. 2021;33(4):746-50.
配信: Medical DOC
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