「子どもが小さいうちは、家庭がその子の世界のすべてです。親子関係・夫婦関係が良いことが、コミュニケーションの原点となります」(櫻井先生 以下同)
昔は兄弟がたくさんいて、地域のつながりやコミュニティもあり、人に触れる機会が多かった。でも、今は少子化でそういった機会が以前より少ない。そのため、人とどう接して良いか自然に学ぶ機会が減り、コミュニケーション能力が育ちにくい環境にあるのだという。
では、具体的にどんな体験をさせたらよいのだろうか。
「子どもが幼いうちは、保育園や幼稚園、公園、赤ちゃんサークルなど、いろんな場所にどんどん連れ出しましょう。人間がライオンを育てて野生に返すと、鹿を見ても恐れてしまうと言います。本来、怖がらなくて良いものも、外に連れ出さず守られた環境で育つと恐れてしまいますから」
また、「親とどこまで親密な交流をしてきたか」ということも、子どものコミュニケーション能力には大きくかかわるそうだ。
「怒られた経験が少ないと、子どもが関係をリカバーする能力が育ちません。本気で怒ったり怒られたりすることで、『関係性が悪くなってもリカバーできる』と実感できる体験をさせていくことが必要なんです」
人と触れ合う経験が少ないと、トラブルを避け、先回りして傷つかないようにしがち。すると、人とのコミュニケーションが深まらず、いったん関係が悪くなると立ち直れなくなってしまうのだ。
「親も子どもに嫌われたくないと思い、つい甘くなりがちですが、怒るときにはしっかり怒るべき。ただし、怒るときは何に対して怒ったかはっきりさせましょう。その後、抱きしめてあげる、褒めてあげることが重要です」
櫻井先生いわく、「育児=育自」。たとえ親がいなくなっても、子どもが一人で生きられる力を身につけさせると同時に、親も子どもが離れていったときに楽しく過ごせる「自分育て」が必要なのかもしれません。
(田幸和歌子+ノオト)