子育てに影響も…自分のきょうだいが嫌いな場合はどうすれば?

第3回 自分の子どもなのに…きょうだいの愛情差について考える
子どもの頃からきょうだいとそりが合わず、大人になってからも負の感情に苦しむ人は多い。そんな気持ちを少しでも楽にするにはどうすればよいのか、女性と子どものための相談機関・フェリアンの窪田容子さんに話を聞いた。

●きょうだいが好きになれないのはなぜか

「昔から姉に対してコンプレックスがあった」「要領がよくわがままな弟が嫌いだった」など、大人になってもきょうだい仲が悪いままの人は少なくない。

「きょうだい仲に問題が生じる原因は、大きく分けてふたつあります。ひとつは親の接し方がきょうだいによって違い、愛情のかけ方に問題があったケース。もうひとつはそのきょうだい本人と相性が合わなかったり、嫌な思いをさせられたりしたケースです」(窪田さん 以下同)

親が別のきょうだいを特別扱いしていたり、ことあるごとに比較したりしていると、親の子に対する扱いに問題があるにも関わらず、「きょうだいのせいで我慢をさせられた」「きょうだいに嫌な思いをさせられた」と、子は親の愛情を得られない不満の矛先を、ほかのきょうだいに向けてしまうという。

たとえば、勉強や運動のできるきょうだいと比べられていた、きょうだいげんかのたびに年上である自分が怒られていた、という人も少なくない。また、きょうだいが病弱だったため自分があまりかまわれなかったことから「自分ばかり我慢していた」と感じる人もいる。

「きょうだい本人との問題は、性格が合わないという理由から、きょうだいの家庭内暴力や性的虐待の被害にあっていたという理由までさまざまです。ただ、家庭内暴力などの場合でも、親が『手がつけられないから』と介入してくれなかったことが、子の深い傷となって残る場合も少なくありません」

●きょうだい仲は、自分の子育てに影響することも

子どものときに感じたきょうだいとの愛情差や不公平感は、自分が家庭をもち、子育てするときにどう影響するのだろうか。

「たとえば自分が第一子で、幼少期に下の子のために我慢させられていた場合は、親になったときに下の子に厳しく当たってしまうことがあります。その逆で『自分はもっと我慢させられていたのに』と上の子に厳しくなってしまう方もいます」

また、兄にいじめられていた過去をもつ人は、息子に対して厳しくなることもあるという。ほかにも、家庭内暴力に苦しんでいた人は、自分の子どもが家庭内暴力を起こしたとき、過去の記憶がよみがえって無力感に陥り、介入できず問題がさらに大きくなっていくことも。

「もちろん、自身の経験を反面教師として過去を断ち切り、乗り越えていく方も大勢いらっしゃいます。ただ、もしも自分の子が愛せなかったり、きょうだいで差のある対応をしてしまったりということで苦しんでいるなら、『自身の過去にその理由があるかもしれない』と振り返ってみることも役に立ちます」

悩む母親

●嫌いなきょうだいとは距離をおいていい

「きょうだいは仲よくするべき」が美徳とされるなかで、大人になってもきょうだいへのコンプレックスや負の感情が消えない人はどのようにすればよいのだろうか。

「仲の良くないきょうだいと、無理に仲よくする必要はありません。法事などの行事で顔を合わせることはあるかもしれませんが、距離を置いてつきあえばよいと思います。ただもし、きょうだいへの強い否定的感情で苦しんでいるのなら、その原因に目を向けてみてはいかがでしょうか」

「きょうだいが好きになれない」という気持ちは、親の子どもたちに対する接し方に原因があったのかもしれない。親の対応がどう影響し、自分が傷ついてきたのかを理解することで、きょうだいに対する恨みが和らぐ可能性がある。

「悩んでいる場合は、カウンセリングなどの専門機関の力を借りることをおすすめします。『自分に愛情をかけてもらえなかった』という悲しみを口にでき、誰かに共感されるだけでも、つらい感情を解放させ、心の傷付きから回復するための一歩となり、自責感を手放し自尊心回復させることへとつながっていきます。また『親に認められたい』という気持ちを手放すことができれば、とても生きやすくなります」

きょうだいとどのような関係を築いてきたか、またその原因を振り返ることは、幼少の頃からの苦しい感情を手放し、自身の子育てを見つめ直す好機となるのではないだろうか。
(取材・文:北東由宇 編集:ノオト)

お話をお聞きした人

窪田容子
窪田容子
フェリアン
女性と子どものための心理相談機関として評判の高い、フェリアン所長。臨床心理士。立命館大学・花園大学非常勤講師。子育てに関する著書・雑誌記事など多数。
女性と子どものための心理相談機関として評判の高い、フェリアン所長。臨床心理士。立命館大学・花園大学非常勤講師。子育てに関する著書・雑誌記事など多数。