「魚のコゲでがんになる」は都市伝説だった
ある程度の年齢の人であれば、「魚のコゲを食べ過ぎるとがんになる」という説をご存じのはず。かくいう筆者も親からそういわれて育ったうちのひとり。しかしこれ、気にするだけ無駄だったようです。
「たしかに、食べものの焦げには発がん性があります。魚や肉に含まれる動物性タンパク質(正確にはトリプトファンやチロシンといったアミノ酸)が、焼かれることによって発がん性物質を作り出すのは事実です。でもそれは体重60kgの人が毎日およそ1t食べた場合と考えられます」(森田さん、以下同)
一般的な焼き魚のコゲをすべて食べたとしても、コゲの摂取量は1kgにも満たないはず。その程度のコゲであれば、仮に毎日食べたとしても、健康に影響が出ることは、まずあり得ないそうです。
ちなみに、「この“都市伝説”は、1976年に大手新聞が一面で、“焼き魚の焦げに発がん性の疑いがある”というニュースを報じたことで広まってしまった情報のようです」と森田さんは話します。
コレステロール値の高い卵は食べ過ぎたらダメ?
魚のコゲ同様に、「卵はコレストロール値が高いから、摂り過ぎはよくない」も昔からいわれている話のひとつですが、森田さんは次のように指摘します。
「卵にはコレステロールが多いので、体に悪いとされてきました。実はこれ、草食動物のウサギに食べさせた1913年のロシアでの実験結果をもとにしています。ですが、人間はウサギと同じ草食でしょうか? 違いますよね。人間は雑食なので卵を食べても大丈夫なのです。健康な人には血液中のコレステロール値を一定に保つはたらきが備わっていますが、ウサギにはそれがないのです」
ロシアの実験では、コレステロール値の上昇が見られたそうですが、それはあくまでもウサギだから。人間ではどうなるかというと…。
「1981年に日本で行われた調査で、1日5~10個の卵を5日間連続して食べるというのがありましたが、結果は、コレステロール値は変化しませんでした。“何個までなら大丈夫”とはいいきれませんが、健康な人であれば、毎食1個卵を食べても、特に問題はないのです」
他にも、厚生労働省が、“コレステロールが多い食品を食べても血中のコレステロール値には影響はない”として、2015年には食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃しています。
「血液中のコレステロールは、肝臓でつくられるのが80~90%で、食事によるものは残りの10~20%だけ。つまり、コレステロールの高いものをたくさん食べたからといって、血中コレステロールが高くなるわけではないのです。体内の悪玉コレステロールが増える理由は、運動しないことが大きな原因です」
健康のために、なんでも鵜のみにしてしまうと、まったく意味がないこともあります。ネットで気軽に情報を集められるようになった昨今。大切なのは、情報の正確さを見分ける力かもしれません。
(文・奈古善晴/考務店)