裁判に発展したご近所トラブルとは?

裁判に発展したご近所トラブルとは?

第2回 子が原因のご近所トラブル 正しい解決法は?
私たちの暮らしと切り離せない近所づきあい。それだけに、一度トラブルが起きると収拾がつかなくなるもの。トラブルの原因が子どもだったとしても許されるというものではなく、ときには裁判沙汰になってしまうことも多いようです。

過去の裁判例は?

そうなった場合、「常日頃の親による指導や監督責任が問題になることがある」と話すのは弁護士の畠山慎市さん。では、具体的にどのような事例があるのでしょうか。

「たとえば、最近の事例では平成24年に、分譲マンションの生活騒音に関する判決が出されています。この事案では、子どもの足音による騒音が問題となったのですが、裁判所は、原告の上の階に住む被告に、午後9時から翌日午前7時までは40デシベルを、午前7時から同日午後9時までは53デシベルを超える騒音を出してはならないという内容の判決を出しました。また、上の階の住民に対して、下の階に住む夫婦にそれぞれ30万円ずつ慰謝料支払うようにも命じられています。この裁判では、幼稚園児の子どもが走り回る足音が夜間にまで及んでいたため、原告は騒音を測る機器で継続的に測定を行い、そのデータを証拠として提出しています。原告がストレスで自律神経失調症になってしまったことも慰謝料が認められたひとつの要因となっています」(畠山さん 以下同)

この判決では、「マンションの所有者である親は、子どもが騒音を出さないように配慮しなければならない」とされているそうです。

自転車事故で1億円の損害賠償も

「ほかにも、子どもが運転する自転車と歩行者の衝突事故で、子どもの親に対する1億円近い損害賠償請求が認められたという事例があります。このケースでは、自転車の乗り方やヘルメット着用についての指導が十分ではなかったとして、親の責任が認められています。生活騒音の裁判をはじめ、子どもによるトラブルに共通するのは、親が日頃から子どもに対して注意をしていたかどうかが問題となるという点です。トラブルになったときに備えてというのも本末転倒ではありますが、指導の振り返りという意味でもいつどのような指導をしていたか、また、どのような対応策をとっていたかなどを日記につけて残しておくというのもいいかもしれません。

ただ、裁判での立証は難しく、親の責任が認められてしまうケースも多いですから、まずはトラブルを起こさないように、日頃から子どもをしっかりとしつけたり、指導をしたりすることを意識した方がいいと思います」

裁判に発展したご近所トラブルとは?

もし迷惑行為を指摘された場合は、改善にむけて真摯に対応することがトラブルを大きくしないための策のひとつかもしれません。
(文・末吉陽子/やじろべえ)

【取材協力】

弁護士・畠山慎市さん
古屋法律事務所
民事、家事、刑事など幅広い分野の事件を扱う。現在は、駒澤大学大学院法曹養成研究科(法科大学院)で、非常勤講師として後進の指導にもあたっている。共編著に「ガイドブック民事保全の実務」。東京弁護士会所属。
民事、家事、刑事など幅広い分野の事件を扱う。現在は、駒澤大学大学院法曹養成研究科(法科大学院)で、非常勤講師として後進の指導にもあたっている。共編著に「ガイドブック民事保全の実務」。東京弁護士会所属。