「叱る」と「怒る」は違う
「子どもがトラブルを起こしたときの注意の仕方ですが、お母さんには『叱る』と『怒る』は違うということを理解していて欲しいと思います。大きな声を張り上げて怒っているお母さんは、とても感情的で言葉遣いも悪いんですね。子どもへの注意よりもお母さん自身が、周りに迷惑を掛けて“自分が恥ずかしい思いをした”という考えになってしまうから、そうした態度になってしまうのだと思います。そうではなく、きちんと落ち着いて『どうしてこんなことしたの?』というように、子どもに問いかけることが大切です。
たとえば、家のなかで走り回るのを止めない子どもに対して、『何で静かにできないのか』とか『足音が周囲に迷惑になってしまうので、走り回ってはいけない』ということだけを伝えるのではなく、なぜ走りたくなるのかという根本の理由を、まずお母さんが考えることから始めていただきたいと思います。そのうえで冷静に言い聞かせ、理解させないといけません。最終的に、『自分がやっていることが本当に悪かった』と子どもが素直に思えているかどうかが大事です」(椎名さん 以下同)
親の感情を優先するのではなく、子どもの目線に立ち「自分のふるまいの何がいけないのか」を本人にしっかり分からせることが必要なようです。ちなみに、小さないたずらをしてしまうのは、子どもにとってごく自然なことなのだそう。
社会性は成長するにつれ自然と身につく
「小学校に入るまでくらいの子どもは、お菓子やおもちゃを人に分け与えるまたは、貸してあげるという感覚が乏しい状態です。そのため、分ける貸してあげるという行為は小さい子どもはストレスなんです。何かを隠したり物を壊してしまうというのは、独占したいという子どもらしい感情の表れなのです」
そうした感情は成長していくにつれて落ち着きをみせ、少しずつ社会性を身につけていくものなのだそう。ただ、成長しても親をはじめ周りの言うことをなかなか聞かない場合は、「発達障害」の可能性もないとは言い切れないようです。
「たとえば、注意してもなかなか落ち着かず、動き回るのを止めない子どもは、ADHDという多動性の障がいの可能性があります。この場合は、落ち着きなさいと言ってもなかなか落ち着けるものではありません。ほかにも、物に執着してしまうアスペルガー症候群の場合は成長しても人に物を譲ることができずに、揉めてしまうことも多いです」
他の子はできるのになんでできないの…と比べてしまうことは、子どもにとって心の傷になってしまうとか。しつけのしにくさや育てづらさを感じたら民間のカウンセリングや小児科医に相談してみることも考慮した方が良さそうです。
(文・末吉陽子/やじろべえ)