腹筋の筋肉痛の原因は「乳酸」ではない!?
「乳酸がたまって筋肉痛だ!」なんて思い込んでいる読者も多いのではないだろうか。重松さんによると、乳酸の蓄積によって筋肉痛が起こると考えられていたのはひと昔前の話だそうだ。
損傷した筋繊維を修復するための「炎症」で起こる筋肉痛
筋肉痛は正式には「遅発性筋痛」と呼ばれ、文字通り運動した直後ではなく、数時間から数日たった後に遅れて起こる。「筋肉痛が起こる原因はいまだはっきりと解明されていませんが、近年は筋肉の収縮によって筋繊維が損傷し、その修復の際に炎症が起こることで痛みを感じるという説が有力だと考えられています。」(重松さん。以下同)
特に、筋肉を伸ばす動きの時に筋繊維が損傷しやすく、筋肉痛が起こりやすい。「トレーニングで狙った部位が筋肉痛になるということは、正しくトレーニングができているということでもあるんですよ。トレーニングに慣れると筋肉痛が起こらなくなりますが、その場合はセット数や負荷に変化をつけて刺激を与えることが必要です。」早く効率的に腹筋を鍛えたいなら、ある程度の筋肉痛は避けて通れないということだ。
筋肉痛を軽減するには?
筋肥大には筋肉痛が必要だとわかっていても、やっぱり痛くて不快な筋肉痛。できるだけ早く痛みを和らげたいと願う読者のために、効果的な方法をご紹介しよう。
筋肉痛の軽減に摂取したい「栄養」
筋肉痛の軽減のためには、休養と栄養が大切だと語る重松さん。栄養面では「トレーニングの前と直後に、タンパク質とアミノ酸の混合物を摂取すること」と「トレーニング後に適度なタンパク質としっかり糖質を摂取すること」で筋肉の修復が促進され、筋肉痛の軽減や筋発達に効果がある。糖質制限がブームとなっているが、トレーニング後の低糖質食は筋肥大を抑制してしまうのでトレーニング直後は糖質制限ダイエットは休んでしっかり糖質を摂ろう。
また、「トレーニング後にグルタミンを摂取すると疲労時のリカバリーをサポートしてくれます。」グルタミンは食品にも含まれているが、サプリメントで摂取するのが手軽でオススメとのこと。
筋肉痛を和らげる効果的な部位別「ストレッチ」
「筋肉痛の回復を早めたいなら、トレーニング後や1日の終わりにストレッチをするのも有効です。」ストレッチで筋肉をほどよく動かすことで、血流が良くなり筋肉痛の回復スピードがアップするというのだ。そこで、部位別に筋肉痛を和らげるためのストレッチ方法を動画で詳しく解説いただく。
ただし、痛みが強かったり熱を持っている場合は炎症がひどい証拠なので、無理にストレッチはせずしっかり休養をとって筋肉の回復を待とう。
腹直筋の筋肉痛を和らげるストレッチ
<腹直筋のストレッチの行い方>
1、うつ伏せに寝る
2、うつ伏せのまま、両手を肩関節の下に置く
3、手の位置はそのまま、上体をゆっくり起こす
(この時、お腹の伸びをしっかり感じるように)
4、呼吸は止めずゆっくり鼻から吸って口から吐くを繰り返す
<ストレッチ時のポイント>
・腰を反りすぎるとお腹の伸びではなく、腰に力が入ってしまうので注意
・腰を反りすぎる場合はまず肘を床につけたままの状態で行うと良い
・お腹に力を入れると伸びを感じやすい
腹斜筋の筋肉痛を和らげるストレッチ
<腹斜筋ストレッチの行い方>
1、伸ばしたい方の足を前に出し卍型に足を組む
2、両手をクロスして胸にあてる
3、前に出した足先の方向にゆっくりと倒れる
4、息を吐きながら深く倒す
(足の向きを入れ替えて1−4を繰り返す)
<ストレッチ時のポイント>
・骨盤帯が前を向いている状態が正しいポジション
・息を吸うときには腹斜筋が伸びていることを感じ、吐き出す時にゆっくりと動かす
・呼吸を常に意識しながら、ゆっくりとした動作で取り組む
腹横筋の筋肉痛を和らげるストレッチ
<腹横筋のストレッチの行い方>
1、仰向けに寝る
2、両足を上にあげて足の外側をしっかり手で握り、肩の力を抜く
(赤ちゃんの6ヶ月のポーズ)
3、鼻からしっかり息を吸い、口から吐くを繰り返す
4、右手で左足の外側を握る
5、鼻からしっかり息を吸い、口から吐くを繰り返す
(おへその横側をしっかりと膨らます)
<ストレッチ時のポイント>
・息を吸うときにはお腹が膨らみ、吐き出すときにお腹がへこむように呼吸を意識する
・お腹をしっかりと拡張する
・呼吸を常に意識しながら、ゆっくりとした動作で取り組む
筋肉痛の時にトレーニングはしないほうが良い?
筋肉痛があっても毎日トレーニングをしたいという、大変ストイックな読者のかたもいるかもしれないが
「筋肉痛の時は筋トレはしない」が正解だという重松さん。「筋肉を強くするには、破壊の後の休養が必要不可欠です。これは『超回復』という筋肉の特性を理解すればわかってもらえると思います。」
効率良く腹筋を鍛えるには「超回復」を理解しよう
では、「超回復」とは何なのか、ここで詳しくご説明しよう。
筋肉はトレーニングをすると疲労し、破壊される。破壊された筋肉は、当然回復しようとする。この破壊から修復する過程において、前のレベルを超えて筋力が高まることを「超回復」と呼ぶのだ。
筋肉の回復には48時間〜72時間程度要すると言われている。この回復期には、筋肉の中でタンパク質の合成レベルが高くなる。栄養素として摂ったアミノ酸を合成して新しいタンパク質をつくり、筋肉を太くしようとするからだ。その合成は48〜72時間後くらいまで続く。そこでおそらく、筋肉の修復・合成がひと段落すると考えられ、超回復が起こっていると考えられる。筋肉痛がなくなることが超回復が終わった一つの目安になるだろう。この回復期はパフォーマンスが低くその時期に激しいトレーニングを行っても筋肉を太くするために効果はないので、しっかりと休養することが大切なのだ。
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筋肉痛と上手に付き合って腹筋を鍛えよう!
筋肉痛は筋トレをするなら避けて通れないものではあるが、今回ご紹介したストレッチなどを取り入れることで、軽減したり回復を早めることは可能。また筋肉痛時は無理にトレーニングを行う必要もないということもおわかりいただけたのではないだろうか。こうして筋肉痛と上手に付き合うことで、効率的に腹筋を鍛え、憧れのシックパックに近づこう。
Text by Saki Ebisu