肩を鍛えるとメリットいっぱい
肩こり予防!?
肩を鍛えるメリットの一つとして、ネットなどで散見される「肩こりが解消される」という説。これは本当なのだろうか?
「筋トレをしたから肩こりが治る、という因果関係はありません。ただ、肩を鍛えるトレーニングで効果を出すためには、正しいフォームや呼吸を身につける必要があります。それらを整えることを通じて体の歪みや四肢の動きが正常になり、結果肩こりも軽減された、ということは起こり得ると思います」(重松さん。以下同)
確かに、トレーニングでの効果を高めるためにはフォームや呼吸が重要であることは過去の取材において繰り返し進言いただいた。IAP(腹腔内圧)を高めれば体幹は安定し、四肢の機能は正常化する。それまで歪みをかばって叫びをあげていた体は無理なく動くことができるようになり、猫背や腰痛、肩こりといったトラブルの改善という恩恵を享受できることもあるだろう。因果はないが相関はあるといえそうだ。
肩を鍛えるととにかく「見映え」する!
なぜ肩を鍛えるのかと問われれば、「映えるから」に尽きるのではないかと思うほどに、肩の筋肉が見た目に与える印象は大きい。広く、丸みを帯びた「メロン肩」の称号は、筋トレに励む男性であれば誰しも憧れるのではないだろうか。
「服を着た状態でも鍛えた肩はわかりますからね。夏場のタンクトップならなおのこと。最近では、肩のラインが浮き上がることで相対的に腕が細く見える効果から、女性でも肩を鍛えたいという方が増えています」
胸、腕、腹をどれほどがんばって鍛えても、肩が貧弱では残念なカラダ。大きく広く丸い肩があってこその、美しい上半身といえそうだ。
肩を鍛えるために知っておきたいこと
「三角筋を効果的に鍛えるには、僧帽筋の関与を減らし、狙った肩だけに効かせるのがポイントです」
三角筋の代表的な筋トレ種目「ダンベルショルダープレス」などでよくあるのが、「三角筋に効かせたいのに、気づけば僧帽筋ばかりに効いている……」といった残念なあるある。その原因は、「筋トレ中、肩をすくめてしまうから」と重松さんは指摘する。
ではどうすればよいのか?肩をすくませずに僧帽筋の関与を抑え、狙った筋肉に確実に効かせるためのアクティベーションは後半でご紹介しよう。
肩の部位の役割をおさらい
三角筋とは、肩を覆うようにしてついている上半身の中で最も大きな筋肉だ。広げると二等辺三角形になることが「三角筋」という名称の由来となっている。
三角筋は前部(フロント)・中部(サイド)・後部(リア)の3つの部位から構成され、ローテータカフ(回旋筋腱板)と機能しあいながら、それぞれの部位が肩関節の各種運動において重要な役割を担う。以下、3つの部位の役割についてご紹介しよう。
三角筋前部の役割
肩関節の屈曲と内旋の主働筋である。
屈曲とは脇に下ろした腕を前に上げていく動作のこと。内旋は、垂直に下ろした腕の親指が外側から内側に向くようにひねる動きのことをいう。
鎖骨外側端から上腕骨につながっている三角筋前部を鍛えると、正面や横から見た時の肩のシルエットが美しくなる。
三角筋中部の役割
肩関節の外転の主働筋である。腕を垂直に下ろした位置から外側に向かってひらいていく動きだ。
肩峰から上腕骨につながっている三角筋中部は、肩幅を広げて逆三角形の上半身を作るために欠かせない筋肉といえる。
三角筋後部の役割
肩関節の伸展と外旋の主働筋である。肩関節伸展とは、腕を垂直に下ろした位置から後方に引くような動作のこと。また外旋は、前述の内旋と反対の外側に腕を回していく動きのことだ。
肩甲棘下縁から上腕骨につながっている三角筋後部が発達すると、肩の厚み・丸みを作り出してくれる。
効果的な部位別トレーニング
まずはこれから!アーノルドプレス
三角筋前部と中部を鍛えるアーノルドプレス。複数の関節を使うことにより、1度に複数の筋肉を鍛えることができるコンパウンド種目であり、トレーニングの前半に行うのが効果的だ。トレーニングすることで三角筋がバランスよく鍛えられて、三角筋が安定する。
<行い方>
1.ダンベルを持った両手を顔の高さで構える
2.手のひらが前に向くように腕を開いていく
3.両腕を上に上げる
4.両腕を下ろす
5.1〜4を繰りかえす
<トレーニング時の注意点>
•肩を上げ過ぎない
•反り腰にならないよう腹筋に力を入れ、頭からお尻まで一直線になるよう体勢を保つ
•ダンベルは常に肘に乗っているという意識を忘れない
三角筋前部を鍛える
前部を鍛えると、正面や横から見た時の肩のシルエットが美しくなることが期待できる。
ダンベルショルダープレス
<行い方>
1.肘を90度に曲げて、手の平を前に向けてダンベルを構える
2.そのまま上に上げる
3.下ろす
4.2・3を繰り返す
<トレーニング時の注意点>
•肩がすくまないように、肩を下げる
•肩の前側の筋の収縮を感じながら行う
フロントレイズ
<行い方>
1、ダンベルを両手で持ち、手を体の側面に下ろしまっすぐな姿勢で立つ
2、ダンベルを片方ずつゆっくり体の前へ持ち上げ肩の高さで止める。
3、ゆっくりダンベルを下ろす。反対の腕も同様に。
(左右交互に2、3を繰り返す。)
<トレーニング時の注意点>
・初心者が両手で行うと負荷が逃げてしまうので、まずは片手ずつ取り組む
・まっすぐではなく、少し内側に上げることでより三角筋前部への負荷が高まる
・下ろす時にも負荷がかかっているので、急に下ろさずゆっくり下ろすよう心がける
三角筋中部を鍛える
三角筋中部をダンベルで鍛えるには、肩を支点に腕を開いていく「サイドレイズ」が効果的。中部を鍛えると、肩幅を広げて逆三角形の上半身により近づくことができる。
サイドレイズ
<行い方>
1、ダンベルを両手で持ち、手を体の側面に下ろしまっすぐな姿勢で立つ
2、両腕をゆっくりと広げて肩の高さで止める。
3、ゆっくりダンベルを下ろす。
(2、3を繰り返す)
<トレーニング時の注意点>
・肩が上がると負荷が僧帽筋に逃げてしまうので、肩のすくみが出ないフォームで行う
・肩甲骨には30度の角度がついているので、真横ではなく30度くらい前に上げる
・肘が下がると肩の故障につながるので、肩から手の甲までが一直線になるように心がける
三角筋後部を鍛える
ご紹介するのは「リアレイズ」「フェイスプル」。三角筋後部が発達することで、肩の厚み・丸みを作り出してくれる。
リアレイズ
<行い方>
1、ダンベルを両手に持ち、上体を倒す
2、ダンベルを持ったまま、両腕を横にひらく
3、両腕を元に戻す
(2、3を繰り返す)
<トレーニング時の注意点>
・ダンベルが準備できない場合は、水の入ったペットボトルを使っても良い
・腕を出す位置が前や後ろになりすぎないよう、体の真横にひらくイメージで動かす
・肩甲骨がなるべく寄らないように注意。三角筋後部が動くことを意識して
・故障の原因となるので、腰は丸めない
フェイスプル
<行い方>
1、ケーブルにロープをつなぐ
2、ロープの先端を握る
3、片足を少し前に出し、スタンスを作る
4、肘を外に開きながら、ロープを自分の顔に近づくよう引っ張っていく
5、ゆっくりと肘を元に戻す
(4、5を繰り返す)
<トレーニング時の注意点>
・顔をロープに近づける際、肩甲骨が寄らないように三角筋の後部の筋肉を動かす
・肘の向きがまっすぐだったり内側に入ったりすると効果がないので、外側に開くことを意識する
筋トレと組み合わせると効果UPのストレッチ・アクティベーション
ウォールシットリーチ
既出の通り、三角筋を効果的に鍛えるためには僧帽筋の関与を減らす必要がある。トレーニング中、肩がすくむと刺激は僧帽筋に逃げてしまうのだ。
「『肩をすくませないで』と注意を受けてもなかなか修正できないトレーニーも多いのではないでしょうか。このアクティベーションで『すくませない状態』を感覚的に理解できれば、トレーニングの効果の高まりも期待できるでしょう」
ダンベルショルダープレスの前などにやると、「肩をすくませない感覚」をキープしたままトレーニングに臨めるのでおすすめだ。
<行い方>
1.頭、背中、肩甲骨、お尻の全てを壁に押しつけた体勢をとる。腰をそって壁との間に隙間ができないように気をつける
2.頭の上に棒を構え、両腕を上げる
3.下げる
4.2・3を繰り返す
<ポイント>
•動作の間は、壁に背面は押しつけたままの体勢をキープする
•肩が上がり過ぎないよう、肩と耳が離れていることを意識しながら上げ下げを繰り返す
シュラック
サイドレイズやショルダーダンベルプレスの前に行うとよいのがシュラックだ。ウォールシットリーチ同様、これら種目は肩をすくませない姿勢でトレーニングすることが重要なので、その感覚をつかみたい。
「このアクティベーションは肩甲骨を下げることが目的。僧帽筋の伸びを感じ、緩ませてください」
<行い方>
1.両手にダンベルを持って直立する
2.肩を上に上げる
3.肩と耳ができるだけ遠くに離れることを意識してゆっくり下げる
4.2・3を10回程度繰り返す
肩関節内旋・外旋
肩関節を内側や外側にひねる時、肩関節の深層にあるローテーターカフが主働筋として作用する。この筋肉に刺激を入れると、肩のトレーニングに効果的だ。
後部を鍛えるリアレイズ、フェイスプルと併せて行うとおすすめ。
<行い方>
1.直立し、プレート(ペットボトルで代替可)を持った腕を上げ、肘が90度になるようにする
2.肩を内側に倒す
3.肩を外側にひねる
4.繰り返し
<ポイント>
•肩をすくませない
•胸を張る
•腰をそらない
•20回くらい回数を行うと効果的
まとめ
肩を鍛えるのは自重だけでは難しいので、ダンベルやアイテムを活用しながら負荷をかけていこう。トレーニングだけでなく、効果を最大化させるためにストレッチやアクティベーションを取り入れて体勢の基盤を整えるのもおすすめだ。
今年の夏は、タンクトップからはみ出た迫力溢れるメロン肩で闊歩しようではないか。
Text by Naoko Takeda