初心者にありがちなNG例
体を上げることばかりに必死な腹筋
「初心者の方が最初に行う筋トレの代表的なものに、腹筋を鍛えるシットアップがあります。このトレーニング、体を起こすことだけに必死な方がとても多いんですが、実はより重要なのは下ろす時。ゆっくり丁寧に体を倒しながら、腹筋が伸びていく感覚を意識することが大事です」(寺田さん。以下同)
筋肉肥大のメカニズムは、伸びる時に筋繊維の破壊が起こり、壊れた筋繊維が修復する際に大きくなるというもの。全てのトレーニングに共通の理論なので、頭に入れておこう。
フォームが間違っている
トレーニングで一番重要なのは、「正しいフォームで行うこと」と、これまでの取材でも寺田さんは繰り返してきた。せっかくのトレーニングも、「正しいフォーム」で行わなければ、成果が出ないばかりか、ケガをしてしまう事すらある。寺田さん曰く「トレーニングで間違った例としてよく見られるのは、反り腰や猫背。これが原因で肩こりや腰痛になってしまうこともあるから、要注意なんです」とのこと。せっかくのトレーニングでケガや痛みを引き起こしては元も子もないので、最初に正しいフォームを覚えておくことは大切だ。
例えば、初心者の人気種目と言えば「腕立て伏せ」だ。
「腕立て伏せは、自重のみで大胸筋を鍛えることができる唯一のトレーニング。やり方も一見簡単で、知らない人はまずいないでしょう。正しいフォームで行えば、腹筋も同時に鍛えることができ、上半身を鍛えるには手軽かつ最適なトレーニングです」
しかしこのフォーム、我流では間違っていることも少なくないという。正しくはどのようにすればよいのだろうか。
「一番のポイントは、体が一直線になる状態をキープすることです」
両腕を床につき体を持ち上げたら、頭からかかとまでが一本の棒のようになっているのが、腕立て伏せの基本の姿勢だ。
「上げる時も、下ろす時もこの基本の姿勢を崩さないように注意しましょう。軸が安定し、腹筋も同時に鍛えられます」
鍛えたい部位以外が痛い
この腕立て伏せ、実際にトレーニングするとターゲットの大胸筋ではなく、なぜか二の腕が痛くなってしまう人がいる。これは、本来効かせるべき胸筋が鍛えられておらず、腕を鍛えている状態だからだと寺田さんは指摘する。こういう残念筋トレ、実は他の種目でもよくある。
「効かせたいと思っている部位以外が痛むというのは、狙った筋肉を鍛えられていない証拠です。トレーニングに何らかの間違いがあるはずなので、見直しましょう」
筋トレをすれば筋肉痛になることは免れないが、無駄な痛みにはなんの意味もないのだ。同時によく聞く残念エピソードが、「腰が痛くなった」という声。
「腰が痛くなってしまうのも、フォームが間違っているから。怪我につながるので直ちに修正しましょう」
魅せ筋ばかり鍛えようとする
筋トレを始めた動機は、『モテたい』という願望ー。実はこんなトレーニーが少ないないのだとか。それゆえに、
「鍛えるとかっこいい筋肉=腹筋、大胸筋だとイメージされる方が多い。しかし、そこばかり鍛えても均整はとれません。全体のバランスを考えてトレーニングしていただきたいですね」
偏った鍛え方では全然かっこよくないのだ。前だけではなく後ろも鍛え、均整のとれた筋肉美を目指したい。
筋トレするなら絶対にやるべきこと
何を目的としたトレーニングなのか?を明確に
ストレッチにしても、トレーニングにしても、「なんのためにこれをやるのか?」という目的がなければ、せっかく汗水たらしても思った成果に直結しない。
「筋肥大なのか?ダイエットなのか?怪我予防なのか?目的によって取り入れるべきストレッチやトレーニングメニュー、RMの設定も変わります」
自分がトレーニングを行う目的を明確にし、同時に種目の効能や行う意味を理解できれば、自分の理想とする結果に日々近づけるので、継続するモチベーションにもなるだろう。
信頼できるプロに教わる
前述した通り、トレーニングの効果を最大化するには正しいフォームが必須だ。しかし、フォームの歪みや間違いに自分自身で気付き、修正するのは初心者には難易度が高い。
「今やインターネットにはトレーニングに関する多くの情報が溢れていますが、必ずしも正しいものばかりではありません。最初は、ターゲットマッスルがどこで、その狙った筋をちゃんと鍛えられているかといった、正しいフォームややり方をプロに指導してもらうのが良いのではないでしょうか」と寺田さんは進言する。
その「プロ」も実は玉石混交だ。トレーナーについても、通りいっぺんの指導で物足りない、質問に今ひとつ納得のいく回答が得られずモヤモヤした経験のある人もいるのではないだろうか。
「スクワットのやり方ひとつとっても、トレーナーによってやり方が違うんです。『こんな人がいい!』という画一的な要素はありませんが、自分が納得できるトレーナーに指導してもらうことをおすすめします」
では、どのような観点でプロを見極めるとよいのだろうか。ヒントを聞いた。
「何か質問した時に、論理的に体系立てて説明できるトレーナーは信用に値するのではないでしょうか。なぜその動作を行うか?筋肉、骨、関節の構造やメカニズムといった深い知識や理論、経験に基づいて指導してくれる人です」
トレーニングと言えば体を動かすことばかりを思い浮かべてしまうが、実は知識も重要なのだ。
「いいトレーナーかどうかを見極めるために、お客さま自身の知識レベルも上げていけるとよいかもしれませんね。動作の意味を理解できれば、トレーナーに習ったことの再現性が高まるので、自宅でも正しいトレーニングが行えるようになりますから」
四の五の言わずに、とにかくやってみる!
前章で少し小難しい話のように構えてしまった読者もいれるかもしれないが、それは誤解だ。
寺田さんは、「まずはとにかくトライしてほしい!」と背中を押す。
「我流でもいいから調べてトレーニングを実際にしてみましょう。やればきっと、課題が見えたり疑問が出てきたりするはずです」
実際に行動することで生まれる疑問やもっと成果を出したいという意欲こそが、トレーニングを継続し、筋肉について勉強するモチベーションにもつながる。その結果知識レベルが上がり、プロの指導に対しても自分なりの意見をもつことができるはずだ。
続く秘訣は、「今すぐ」やること
トレーニングの成果は一朝一夕では表れない。継続が重要だ。しかし、この続けることが実は相当難しい。忙しさを理由に挫折してきた読者も少なくないはずだ。
トレーニング継続の最大の秘訣は、「とにかく今すぐやる」ことだと寺田さんは強調する。
「『トレーニングしようかな、どうしようかな』と迷っている間にどんどんやる気は削がれていくもの。余計なことを考える前に、思い立ったらすぐに体を動かしてみてください」
実はこれは脳科学の観点からも理にかなっているそうだ。人間の本能や情動にかかわる大脳辺縁系で生まれた「サボりたい」という本能を前頭葉が抑え、理性である「運動する」と司令を出そうとするのだが、この抑制の効力にはタイムリミットがあるのだという。だから、「あと5分テレビを見てから始めよう」「このメッセージを送ったら運動しよう」と思っていても、その間腰はどんどん重くなって結局行動できずじまいなのだ。
また、やる気があるからトレーニングをするのではなく、実際に体を動かすことでやる気が出てくるというのも脳科学の観点から言える。
というのも、体を動かすことで大脳辺縁系の側坐核が活性化され、やる気の源「ドーパミン」が分泌される。やる気は起きるのを待つのではく、行動によって作れるものなのだ。
2019年は魅せる体でモテオヤジへ
継続的な運動習慣は、夢の筋肉BODYに近づくだけでなく、健康状態も気になるミドルには予防医療としても一石二鳥だ。健康診断でも、ビジネスシーンでもオールA判定を目指し、今年も躍進していただきたい。
Text by 武田尚子