医師はどのような基準で抗がん剤の投与期間を短くする?
抗がん剤のレジメンでは、1クール内の投与期間や投与直後の休薬期間が決まっています。しかし、状況に応じてクール内の休薬期間を延ばすことがあります。休薬期間が伸びる以外にも、決められたレジメンよりも予定クール数を少なくして早期に終了することがあります。レジメン通りに抗がん剤が投与できないと、抗がん剤の投与期間は短くなり、当初想定していた抗がん剤の予定投与量よりも少なくなります。こうしてレジメンが予定通りにいかない場合、レジメンを当初より短く終了するというのは3つのパターンがあります。以下に説明します。
抗がん剤の副作用が強くでた場合
1つ目は、抗がん剤の副作用が強く出てしまい、有害事象共通基準(略称:CTCAE)と呼ばれる基準で重度にあたるグレード3以上が複数出た場合などです。治療は、抗がん剤をレジメンより減量したり、効果的な支持療法を新たに組み合わせたりしながら、続けられるように試みられます。しかし、残念ながら身体が回復せず、それ以上レジメンを継続できないこともあります。
本人が希望する場合
2つ目は、抗がん剤の副作用が中等度のグレード2以下であっても、患者さん自身がその副作用に耐えられなかったり、続けることそのものを希望されなかったりする、本人希望によるレジメンの中止です。
抗がん剤の治療効果が乏しいと判断された場合
3つ目は、抗がん剤レジメンを続けて複数回クールごとにおこなう効果の評価タイミングで、抗がん剤が治療効果に乏しいと判断された場合の、効果無効によるレジメンの中止です。
がんによっては3〜5、多い時では10以上のレジメンが規定されています。医療の進歩でレジメンは少しずつ増えている状況ですが、1つ目のレジメンが中止、2つ目のレジメンが中止となって、最後のレジメンが中止になると、抗がん剤による治療はそれ以上行われません。代わりに、それまでも支持療法として行っていた緩和ケア治療がメインの治療になります。
抗がん剤投与期間が長くなりやすい病気・疾患
乳がん
乳がんは進行がゆっくりであることも多く、抗がん剤の投与期間が長くなる場合があります。
ホルモン受容体陽性のタイプは、術後の補助療法が10年間推奨されています。
前立腺がん
前立腺がんでは、抗がん剤の投与期間が長くなることも多いです。
前立腺がんは、進行がゆっくりであることが多く、経過観察やホルモン療法などを数十年続けることがあります。
肺がん
肺がんの種類によっては抗がん剤の治療期間が長期になります。
肺がんの中でも分子標的薬治療が効果的なタイプは、副作用がほかの抗がん剤と比べて少なめなこともあり、何年も続けることがあります。
血液がん
血液がんでは、抗がん剤の治療期間が長期になる事が少なくありません。
濾胞性リンパ腫(FL)や慢性リンパ性白血病(CLL)など急性経過でない血液がんは、無治療経過観察期間が年単位であることが多く、治療開始となっても病状を長く安定させることを目的とした治療が長く続くことがあります。

