ビタミンDが不足すると現れる症状

くる病
くる病は成長期の子どもに起こる病気で、石灰化して固まるはずの骨がカルシウムとリンの不足により石灰化が起こらず弱い骨が形成される病気です。ビタミンDの不足によるくる病を、ビタミンD欠乏性くる病といいます。症状は、骨が弱いため曲がりやすくなるのが特徴で、O脚・X脚・頭蓋骨のへこみ・成長障害・歩行障害などが現れます。子どもの足の骨の歪みや変形がみられるなどくる病の症状が疑われる場合は、小児科もしくは整形外科で受診しましょう。
骨軟化症
骨軟化症も骨の石灰化の障害によって骨が弱くなり、骨折や痛みの原因になる病気です。骨軟化症にはいくつかの要因がありますが、ビタミンDの不足も要因の一つです。骨軟化症の症状は、初期ではほとんど症状は感じられませんが、骨の痛みが出てきます。痛みは股関節・腰背部・膝・骨盤・足などを訴える方が多いです。進行してしまうと骨折をはじめ、足やお尻の筋力低下による歩行障害、背骨の変形などがあらわれます。足になんとなく鈍い痛みがある、股関節や背骨に痛みがある場合は、整形外科あるいは内科で受診しましょう。
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨の骨密度が減ったり骨の質が低下したりすることで骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。骨は常に古い骨を壊し、新しい骨を作るという代謝を繰り返しています。加齢や女性ホルモンの減少、カルシウム不足により代謝のバランスが崩れて骨の密度が低下してしまいます。背骨・大腿骨・手首・肩の付け根の骨は骨折が起きやすい部位です。ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が悪くなり、カルシウム不足になってしまいます。女性の方は50歳頃から定期的に骨密度の検査をすることをおすすめします。
低カルシウム血症
低カルシウム血症は、血中のカルシウム濃度が正常値より低くなっている状態です。低カルシウム血症の症状は、手足のしびれ・お口周りのしびれ・全身の痙攣などの神経症状、心臓の筋力低下による収縮力の低下・不整脈などの心臓の症状です。その他にも、幻覚・興奮・抑うつなどの精神的な症状や、嘔吐・下痢などの消化器症状が出る可能性もあります。低カルシウム血症になる原因はいくつかありますが、そのなかの一つに血中のカルシウム濃度を調整する働きをするビタミンDの不足が考えられます。手足やお口周りなどのしびれの症状が数日続くようなら、低カルシウム血症を疑い、内科のある医療機関で受診しましょう。
ビタミンDが不足する原因

屋外での活動量の低下
ビタミンDは日光(紫外線)にあたることで、皮膚から合成できるビタミンです。ただし、日光にあたらないとビタミンDは体内で合成できないため、ビタミンDの不足につながると考えられます。屋内での仕事で日中は外に出ることがなかったり、コロナの影響でより外出する機会が減ってしまったり、日光にあたるような屋外での活動が減っているのがビタミンDの不足に影響しています。
過剰な紫外線対策
ビタミンDを体内で合成するには一定時間日光(紫外線)にあたることが必要です。日焼けの原因となるUV-Bとよばれる紫外線にあたると、体内でビタミンD3が合成される仕組みです。しかし、日焼けやシミ・しわの防止など美容を気にする女性は、日焼け止めクリームやUVカット製品などで紫外線からしっかり守ることを重要視しています。過剰な紫外線対策は、日光によるビタミンDの生成ができなくなり、不足状態に陥ってしまいます。
食生活の変化
食べ物から摂取できるビタミンDは、植物由来のビタミンD2と動物由来のビタミンD3の二つです。ある調査結果では、植物由来のビタミンD2の摂取がほとんどないことが判明しています。また、若い人程ビタミンDが不足している割合が高いという調査結果もあります。これらの調査結果から、現代の日本人の食生活の変化によるものが影響していると考えられるでしょう。
腸の吸収不良
食事でビタミンDを摂取すると、小腸で吸収され肝臓と腎臓で活性型ビタミンDに変換され体内でさまざまな働きをします。またビタミンDは小腸でカルシウムとリンの吸収を促進する働きもあります。腸の環境が整っていなければ、必要量を摂取しても十分な量を吸収できず、不足の状態になると考えられるでしょう。
ビタミンDの分解を促す薬の服用
一部の医薬品は、ビタミンDを分解し血中のビタミンDの濃度を低下させる可能性があります。血中のビタミンDの濃度を低下させる薬は、抗てんかん薬・抗腫瘍薬・抗生物質・抗炎症薬・降圧剤・抗エストロゲン薬などです。医薬品を服用している場合は、医師に相談しましょう。

