俳優の阿部サダヲが主演を務めた連続ドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系、2024年)のスペシャル版「新年早々 不適切にもほどがある!~真面目な話、しちゃダメですか?~」が1月4日午後9時から放送される。
昭和の体育教師が1986年から2024年へタイムスリップし、令和では「不適切」とされる昭和的な言動で現代人の凝り固まった価値観に風穴を開けた意識低い系タイムスリップコメディー「ふてほど」。脚本を宮藤官九郎さんが務め、阿部や宮藤さんとこれまで多くの話題作を手がけてきた磯山晶さんがプロデュースした。2024年の「新語・流行語大賞」では「ふてほど」が年間大賞に輝き、社会現象を巻き起こした。
新春に放送されるSPドラマでは、連ドラの「その後」が描かれる。技術が進歩し、好きな時代に行けるようになった中学教師の小川市郎(阿部)が、娘の純子(河合優実)の未来を変えようと再び立ち上がる。過去だけでなく、令和より先の未来にもタイムスリップする市郎について、阿部は「『どの年代の人が今、ここにいるのか』を把握するのが結構大変でした」と振り返った。
変わらない“市郎”を軸に、再び時代を超える
――スペシャルドラマが決まった時の心境を教えてください
「連続ドラマの打ち上げの時に『続編があるかもね』みたいな感じで終わっていたので、(オファーが)『来たな!』という感じでした」
――連続ドラマの際に「最初のセリフからぶっ飛んでいて驚いた」と話していましたが、今回の台本を読んだ時の第一印象は?
「好きな時代に行けますから、『これは相当面白くなりそうだな』と思いましたし、『今どこに誰がいるんだ?』と混乱しそうになる瞬間もあって…。珍しく宮藤さんも執筆の手が止まったそうで、『これは確かに聞かないと分からないな』と思いました。でも、最後はとてもいい終わり方だなと思いました」
――再び小川市郎を演じるにあたって、どのように向き合いましたか?
「『小川市郎』という人物自身は変わらないので、特に準備はしていません。ただ、年代によって『未来を変えていいのか、いけないのか』という考え方が違うので、その整理は大事にしました。『どの年代の人が今、ここにいるのか』を把握するのが結構大変でした」
“自分と対話する芝居”の難しさと楽しさ
――本作には“たくさんの市郎”が登場するそうですね
「同じ場所に何人もの市郎が出てくるので、どうやって撮影するのかなと思っていたんです。そうしたら、助監督やエキストラの方に僕以外の市郎を演じてもらって、それに合わせて僕がそれぞれの市郎役の芝居をしていきました。そうやって撮った映像を合成するとのことで、声も体もかぶっちゃいけないので、そのあたりは大変でした。動きや立ち位置も細かく決められていて、『ここでしゃべってください』と指示を受けながら進めたので、時間はかかりましたけど面白かったです。初めての体験だったので、完成映像を見るのが楽しみです。映像を見た監督からは『良かった』と聞いたので、安心しています」
――普段の撮影とは異なる大変さもありましたか?
「そうですね。普段はしゃべっている相手を見ながら芝居するんですけど、自分と対面している設定だから、実際に目の前に自分はいないので、やっぱり難しいですね。
『この人としゃべっているんだよね』『こっちの人の話を聞いているんだよな』と頭に浮かべながら演じていました」
「なんでもできる」江口のりこの芝居に感嘆
――今回は、江口のりこさんが都議会議員・平じゅん子役でゲスト出演されています
「江口さんは『俺の家の話』(2021年)でも宮藤さん脚本の作品に出ていて、『なんでもできるな』『宮藤さんの脚本に合うな』と思っていたので、一緒に宮藤さんの作品をやることができてうれしかったです。
今回も政治家の役ということで、どう演じるのかなと思っていましたけど、やっぱり面白い。じゅん子を中心に回っていくお話でもあるので、見応えがあると思います。
ご本人も『すごく楽しかった』と話していましたし、こんな江口さんはなかなか見られないと思います。
――特に印象に残っていることはありますか?
「純子の未来を変えていいのかどうか、そこは演じながらも常に意識していました。連ドラの時の出来事がこのスペシャルドラマにもつながっているので、『あの時は何年の市郎だったっけ?』と、監督と一緒に確認しながら演じました。難しかったけど、面白かったです」
脚本からあふれる“面白さ”を感覚でつかむ
――阿部さん、宮藤さん、磯山プロデューサーのチームだからこそ実現できたことは何だと思いますか?
「磯山さんと宮藤さんが『こういうのがやりたい』と話し合っていたところに、僕は何も知らないまま入っていくんです(笑)。今回の話もまさかこうなるとは思っていませんでした。
宮藤さんは政治の話を書かれることが多いんですよね。映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』(2006年)でも高田純次さんが市長役をやっていましたし、映画『舞妓Haaaan!!!』(2007年)では僕が演じる主人公が区議会議員に立候補していましたから。今回も、きっとやりたかったテーマなんだと思います」
――宮藤さんは「阿部さんがセリフのニュアンスを理解して演じてくれる」と話していました
「そんなに深く考えなくても面白いんですよ。読んでいるだけで“あ、こういう感じでいけばいいんだな”って分かる。感覚でしかないけど、読んでも面白いし、しゃべっても面白い。宮藤さんの脚本って本当にすごいなと思います」
――最後に、視聴者へメッセージをお願いします
「お正月なのでね、家族みんなで見ていただけたら。ちょっとそわそわするシーンもありますけど(笑)、その“昭和っぽさ”を楽しんでもらえたらうれしいです。
お正月から“すごく不適切”な感じもありますけど、家族や親子愛はきちんと続いているので、そこも感じてほしいです。
あと、今、どの時代の市郎がどこにいるかがややこしいかも。メモしながら見るのもおすすめです(笑)。何度見ても楽しめる作品になっていると思うので、ぜひご覧ください」

