2021年本屋大賞にノミネートされた深緑野分さんの人気小説を原作とした劇場アニメ「この本を盗む者は」が12月26日から公開される。書物の街、読長町を舞台にした謎解き冒険ファンタジーで、巨大な書庫「御倉館」を管理する家に生まれながら本が苦手な女子高生、御倉深冬と、彼女と共に町にかけられた呪いを解こうと奔走する不思議な少女、真白の活躍を描く。
深冬の声を担当するのは、NHK連続テレビ小説「虎に翼」(24年)で注目を集めた女優の片岡凜。ヒロイン佐田寅子(伊藤沙莉)に「なぜ人を殺してはいけないのか?」という哲学的な問いを投げかけたミステリアスな女子高生、森口美佐江と、その娘の美雪という二役を演じ分け、視聴者に強い印象を残した。そんな片岡が今回、声優に初挑戦。新鮮な気持ちで収録に臨み、声で表現することの意味を考えながら、役に向き合ったという。
――今回のお仕事についての第一印象をお聞かせください
「すごくびっくりしましたが、アニメの声優さんのお仕事は以前からやらせていただきたいと、ずっと思っていたので、すごく楽しみでした。本当にすてきな作品で、脚本を読んだ時にひきつけられる力が本当に強くて。原作小説もコミカライズも全部読ませていただきましたが、深冬という人物にもすごく魅力を感じて、この役を私に任せていただけたことがとてもうれしくて。 皆さんに、作品も、深冬という主人公も魅力的に見えるようにがんばらせていただきたいなという気持ちでいっぱいでした」
――深冬を演じる上で意識したことはありますか?
「どこにでもいるような女子高生に見えるので、特別な感じを出すというわけではなくて、ちょっとだるさが常に漂っているような、めんどくさそうな雰囲気になるよう、意識していました。でも、お話が進むにつれて、自分の強さをどんどん成長させていったり、いろんなことに新鮮に混乱したりする場面は、それまでとの振り幅を持たせるように、声のイントネーションと強さはすごく意識しました」
――アフレコに挑戦してみていかがでしたか? 特に難しかった点、ご苦労されたことはありましたか?
「普段やらせていただいている実写のお仕事とは全然表現の仕方が違うので、とても新鮮だな、と感じました。難しかったのは、自分の声だけで、映画を見る人に言葉に込められた思いを伝えないといけないことですね。一つのセリフの中で、何を一番伝えたいのかをとにかくすごく考えて、いろんなパターンを考えながら、アフレコ現場で試させていただきました」
――アフレコは、 真白役の田牧そらさんと一緒だったそうですね
「このお話は、2人のコンビ感がとても大事な作品だったので、ずっと2人きりでのアフレコだったんですけど、やっぱりお相手が一緒にいてくださると、実際の声のトーンを確認しながら、お芝居できるので心強かったです。深冬が、真白の手を引っぱって歩いていくっていうシーンがあるのですが、そこは監督のご指示で、実際に2人で手をつなぎながら演技させていただいたんです。そこでも田牧さんの手の温かさに助けられました。『真白、行くよ』というセリフに対して『ちょっとツンデレに見えるけど優しさがほしい』という監督からのオーダーがあったのですが、実際に田牧さんと手をつなぐことで、そのニュアンスを出すことができました」
――深冬のようなごく普通の女子高生役もすてきですが、「虎に翼」の美佐江と美雪役でのミステリアスな演技も素晴らしかったです
「美佐江と美雪という役は、自分を投影しながら演技できたと思います。一人二役ということもあり、私自身も役について考えましたし、悩んだところもあったんですけど、ある場面でドライリハーサルが終わった後に、監督が『よし、じゃあこのまますぐ撮ろう』と言ってくださった時があって。その時は、すごく安心感もありましたし、ちゃんと現場に持ってきた演技が間違ってなかった、という気持ちを感じる場面も多かったです。『本当はこの人、何を思ってるんだろう?』と思うような役柄でお芝居するのが、すごく好きですね」
――美佐江と美雪を演じて、変化したことはありましたか?
「ネットでエゴサは一切しないんですが、以前はインスタグラムのDMを全部見させていただいて。そこには、やっぱり『美佐江怖い』っていっぱい書いてありました(笑)。あと『美佐江だ』と、街で声をかけてくださった方がいらした時は、ただただうれしかったですね。私を見て『あの役だ!』って言ってくださるものがあるっていうのが本当にうれしくて、ありがたい気持ちでいっぱいでした」
――最後に、映画の公開を楽しみにされている皆さまへメッセージをお願いします
「人が誰しも持っている、何か好きなものに対する気持ちや、トラウマを克服する強さだったりという感情に対して、作品全体を通してフォーカスを当てている物語です。強いメッセージが込められているので、そこに注目しながら、この作品をご覧になっていただきたいなと思います」

