8日スタートの連続ドラマ「おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-」(テレビ朝日系、木曜午後9時)で主演を務める女優の松嶋菜々子。「魔女の条件」「やまとなでしこ」「美女か野獣」「家政婦のミタ」など、平成を彩った日本のドラマ史に残る名作でヒロインを演じてきた彼女が、約10年ぶりに「座長」を務めることになった。クランクイン前、松嶋は役作りの一環で髪型をバッサリ。役と真摯(しんし)に向き合う覚悟を持って芝居に打ち込んでいる。また、彼女の脇を固める役者陣も豪華で、現場では一癖も二癖もある共演者たちとの化学反応を楽しんでいるようだ。(取材・文:磯部正和)
久々の主演、襲ってきたのは「不安」だった
本作は、東京国税局内に秘密裏に設けられた架空の部署「複雑国税事案処理室」通称“ザッコク”を舞台にしたエンターテインメントドラマ。松嶋演じる主人公の米田正子は個性的なメンバーを率い、他部署では扱いきれない富裕層や大企業の脱税、資産隠しといった不正にメスを入れていく。
これまで数多くの映画やドラマで主演を務め、数多くの現場を引っ張ってきた松嶋だが、約10年ぶりの連続ドラマ主演という立場に小さな影を落としていた。オファーを受けた瞬間に脳裏をよぎったのは、喜びや興奮よりも、もっと現実的で切実な感情だったという。
「まず、主演が久々だったので、体力的に大丈夫かなという不安がありました。職業もので説明ゼリフも多いため、そういった部分を面白く表現できるか…。台本の面白さは感じつつも、やはり不安の方が大きかったですね。撮影がまだ1話の途中なので、探り探りではありますが、これからというところです」
東京国税局資料調査課の中に新設されたドラマオリジナルの部署「複雑国税事案処理室(ザッコク)」を創設し、個性的なメンバーを束ねていく正子。松嶋は「部署の存在について初めて聞きましたので、個人的な好奇心も湧きました。皆さんがご存知の『マルサの女』とは少し違い、『ザッコク』という架空の部署を立ち上げた設定です。その設定のおかげで、よりエンターテインメント性が描けるなと思いましたし、そこが面白い部分だと感じました」と話す。
役作りのための断髪、そこに迷いはなかった
公開されたビジュアルで世間を驚かせたのは、松嶋の潔いショートカット姿。長年、豊かなロングヘアがトレードマークだったが、今回の変身にためらいはなかったという。むしろ、「米田正子」というキャラクターの核となる「合理性」を追求した結果、必然的に導き出されたスタイルだったと強調する。
「キャラクター作りに見た目は大きく影響します。これまでは着物を着ている役が多かったので自然と髪が長かったのですが、私自身は実はショートが好きでして。『あ、切れるな』と思ってうれしかったんです(笑)。あまり自分の容姿の手入れに時間をかけているキャラクターにはしたくなかったので、お風呂上がりに一番早く支度ができる髪型を考えた結果、やはりショートが良いなと」
実際に髪を切ったことで得られた解放感は、そのまま役の軽やかさへとつながっている。
「シャンプーも少なくなりますし、乾かす時間も短くなります。もちろん撮影用にヘアメイクさんにセットしていただいていますが、イメージ的には本当に乾かした後に、ササッと手でオイルをつけて終わり、くらいの感覚で作りました」
「座長」として見つめる、個性豊かなチームの肖像
正子が率いる「ザッコク」のメンバーは、いずれも強烈な個性を放つ。共演者は、かつて親子役を演じたこともある佐野勇斗をはじめ、高橋克実、大地真央といった実力派が集結した。
「『個性を大事に、個々の力を大事にする部署ですよ』と宣言して集めたメンバーなので、彼らの得意分野を生かした問題解決が見どころです。佐野さんとは以前、(16年の連ドラ『砂の塔~知りすぎた隣人』で)親子役でしたが、今度は同僚としてお会いできるのがすごく楽しみです。2人で動くことが多いのでどんな形になるのかワクワクしています。高橋克実さんは現場を明るくしてくださいますし、大地真央さんは潜入捜査で何を着てもお似合いですてき。ザッコクメンバーがどう問題を解決していくかも楽しみにしていただきたいですね」
かつては自身の演技に没頭するあまり、周囲を見る余裕がなかったというが、現在は現場全体を俯瞰し、楽しむゆとりがあるという。
「20代、30代のころは空き時間があればとにかく台本を読み込んで、次のシーンをどう乗り越えるかということにしか頭が回っていなかったような気がします。でも今は共演者の演技をモニターで見て、一緒に楽しめています。現場でもっとコミュニケーションを取りたいですね」
「知ったこっちゃない」に見え隠れする本音とエール
正子は決して正義のヒーロー然とした振る舞いをするわけではない。時に冷徹に、時にサバサバと職務を遂行する彼女の姿には、松嶋自身の人間観や、現代を生きる女性たちへのメッセージが込められている。
「刑事ではないので厳しすぎず、あくまで『対人間』として、見ている方々の気分があまり悪くならないよう気をつけています。真面目にやればとことん真面目にもできるんですが、そこはエンターテインメントなので、人間としての正子の個性というか、『知ったこっちゃないけど』と本音をポロリと言ってしまうような部分が、キャラクターに反映されていると思います」
自身も長く第一線で走り続けてきたからこそ、正子というキャラクターを通じて伝えたい思いがある。
「正子を通じて、もっと余裕を持って、楽しく、いろんなことに緩く、だけどキャリアには自信を持って生きてほしいなと思います。この先もよりパワフルに生きてほしいですね」

