「決められない時代」に結婚を決めるということ
近年の婚活市場は、AIによる高精度なマッチングや婚活アプリの普及、結婚相談所の増加によって、かつてないほど「選べる時代」になりました。
一見すると結婚しやすくなったように見えますが、現場ではむしろ「決められない人」が増えています。選択肢が無数にあることで、「もっと良い相手がいるのではないか」という思考が生まれ、結婚の決断そのものが先送りされてしまうのです。
えつこさんは、まさにその典型でした。婚活アプリで300人近くに会い、結婚相談所でも半年で30人とお見合いをしましたが、最後まで決めきれませんでした。
条件は悪くない、けれど「次の人の方が良いかもしれない」という迷いが常につきまとっていたのです。
一方、たかしさんは、離婚で大きな代償を払った経験から、「もう失敗したくない」という思いが強く、相手に求める条件を厳しくしてしまいました。その結果、選択肢は狭まり、やはり決断できない状態に陥っていました。
2人に共通しているのは、優柔不断さではありません。問題は、婚活での結婚を「一番いい条件を探す作業」だと捉えてしまっている点にあります。
しかし、結婚とは本来、「正解」を探すことではなく、自分で腹落ちできる選択をすることです。条件を積み上げても、不安やリスクを完全に消すことはできません。
結婚を決められる人たちは、「もっと良い可能性があるかもしれない」という未来を、どこかで手放しています。全てを満たす相手を探すのではなく、「この人となら、不完全さを抱えたままでも、前に進める」という視点で相手を見ているのです。
なぜ不完全でも進めるか。相手の人柄の良さや考え方や価値観の一致を見つけて、そこを信頼し、相手を愛したからです。
何かを選ぶということは、同時に他の可能性を捨てる覚悟を持つことでもあります。
だからこそ、婚活は、出会いの数を増やすことではありません。なぜ決められないのか、何を恐れているのか、何を手放せていないのかを自身で言語化し、意思決定を支えることにあるのです。
