現在NHKで放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」で、ヒロイン松野トキ(髙石あかり)の夫、レフカダ・ヘブンを好演している英国人俳優、トミー・バストウ。物語は中盤から終盤へと差し掛かり、第20週(2月16日〜)から、舞台は松江から熊本へと移る。10年以上学び続けてきた日本語を操り、異国の地で「小泉八雲」という大きな存在をモデルにした役に魂を吹き込むバストウが、これまでの歩みを振り返りながら、日本への深い愛とドラマへの思いを語った。
朝ドラ「ばけばけ」とは?
松江の没落士族の娘、小泉セツと、その夫で作家のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとした物語。島根や熊本などを舞台に、怪談を愛し、何気ない日常を歩んでいく夫婦の姿をフィクションとして描く。脚本は「バイプレイヤーズ」(テレビ東京)や「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(総合)などで知られるふじきみつ彦氏。主題歌「笑ったり転んだり」を夫婦デュオのハンバート ハンバートが歌う。
おトキちゃん(髙石あかり)にヘブン先生が恋をした瞬間
劇中、ヘブンがトキに恋をし、結婚を決意した瞬間について、自身は第10週に「2つあった」と語る。1つ目は、ヘブンが松江の寒さで床に伏した際、献身的に看病してくれた時で「トキさんのおかげで達者になった。いいお嫁さんになるだろう」との思いを抱いたという。もう1つは、髙石の芝居そのもの。「大寒波を説明してもらうシーンで、トミーとしてもキュンとしました。あのジェスチャーや表情がとてもかわいい。僕が恋に落ちたのかな(笑)」と、役と本人がシンクロした瞬間を明かした。
来日したばかりのヘブンを演じる際、「徐々に慣れていく」過程の表現には苦心したという。自身としては、日本語が話せ箸も使えるが、「使えないふりをします」。特に箸の持ち方は、物語の進行に合わせて持つ位置を少しずつ上げていくなど細部にまでこだわった。
片言の日本語での演技についても困難を極めた。「セリフを覚えるのは難しい。文の順番があっちゃこっちゃ行っているので、暗記するのに思ったより時間がかかる」と吐露し、かつて日本語学校で学んだ英国人クラスメイトの話し方をヒントに、あえて流暢さを封印することで、異国人としてのリアリティーを追求していると述べた。
出雲大社での体験とハーンへの共感
第66回(1月5日放送)のシーンは、実際に出雲大社でロケを行った。撮影が許可された「聖域」での体験を「ハーンさんのもとへ行くような気持ちでした」と振り返る。史実でも、八雲がその場所に入った初めての外国人で「外国人の役者として初めてその聖域に入らせていただいたのが私だというところで、すごくハーンさんに近づけた感覚になりました」としみじみ。八雲と自身の背景を重ね、「僕も子供の頃から日本の文化に惹かれていた。自分の文化の中にいるんだけれども、そこに違和感を覚える時があった」と語る。「自国の文化というぬるま湯から脱して、冒険者の精神で異国に身を投じ、探求するところが似ていると思う」とし、日本へ渡り言葉を学んだハーンの勇気へ深い敬意を示した。
昨年末の紅白歌合戦では、ハンバート ハンバートによる主題歌を髙石とステージ上で鑑賞。「ハーモニーが最高。ライブで何度か一緒に聞いていますが、いつも聞くたびに僕たちの関係が深くなる気がします」と語る。放送開始直後に曲を聴いた際も「なぜかわからないけど、感動しすぎて泣きました」。音域が自分に合っていると分かったことから、2026年末の自身のバンドのライブでカバーしたいという意欲も見せた。
「熊本編」の見どころ&錦織さん(吉沢亮)との関係
「熊本編」では、若いキャストが加わり「エネルギーアップ」するという。ヘブンは「大黒柱」としての責任を感じながら奮闘。「いろんなチャレンジにトキさんと取り組まなければならず、本当に面白い部分だと思います」と今後の展開に自信をのぞかせる。
また、熊本へ移って離ればなれとなる「親友」錦織友一(吉沢亮)との関係については、モデルとなったハーンと西田千太郎氏の史実に触れ、「手紙を100枚以上送り合ったそうです。本当に貴重な友情でした。ヘブンさんも錦織のことを忘れないと思います」と話す。
改めて日本の朝ドラに出演する喜びを噛み締めている。「10年以上日本語を勉強して、子供の頃から日本が大好きだから、日本のテレビ番組、しかも朝ドラに出演するなんて夢が叶ったみたいな感じです」。黒澤映画の三船敏郎に憧れて俳優を志した自身にとって、日本での活動は一過性のものではなく、その言葉に、強い覚悟がうかがえる。「最期まで日本の仕事をしたいと思います。できればね」

