現在放送中のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(総合ほか)で、ヒロイン松野トキ(髙石あかり)の母、フミを好演している女優の池脇千鶴。朝ドラ出演は、主演を務めた「ほんまもん」(2001年度後期)以来、実に24年ぶりだが、劇中で放つ存在感はピカイチだ。
フミは、娘の幸せを願う優しくもしっかりした母親。出雲大社の上官の家で育ったため神々の物語や霊的な話に精通しており、幼少期のトキに多くの怪談を聞かせてきた。その知識ゆえに怪談好きのレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)とはすぐに意気投合。妻となるトキの感性を育んだ重要な役割を担った。
第18週「マツエ、スバラシ。」では、そんなフミたち松野家の面々がつらい現実に直面した。地元紙「松江新報」に載った記事の影響で、ヘブンと一緒になったトキがラシャメン(異人の妾)であるという誤解が広まり、一家が松江市民の中傷にさらされた。買い物中に石を投げられ、流血した娘に「大丈夫、大丈夫だからね」と優しく声をかけながら、「誰です? 誰なんですか!?」と気丈に相手を咎めたフミ。池脇はこの場面の心境を「本当に腹立たしかった。やり返しに行きたいぐらいの気持ち」と振り返り、「母親としては許せません」とフミの気持ちを代弁した。
朝ドラ「ばけばけ」とは?
松江の没落士族の娘、小泉セツと、その夫で作家のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとした物語。島根や熊本などを舞台に、怪談を愛し、何気ない日常を歩んでいく夫婦の姿をフィクションとして描く。脚本は「バイプレイヤーズ」(テレビ東京)や「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(総合)などで知られるふじきみつ彦氏。主題歌「笑ったり転んだり」をハンバートハンバートが歌う。
池脇千鶴 Q&A
Q1 ここまで演じてきた現場の雰囲気は?
「とにかく楽しい撮影現場です。こんなに楽しいのは初めてかもしれません。フミ自身が明るい人なのでそこに助けられているところもあり、撮影の合間の皆さんとの空気も『こんなにリラックスしていていいのかな?』と思うほど和やかです。髙石あかりちゃんは物怖じしなくて、すごく頼れる方です。私はあかりちゃんの胸を借りているところが、かなりあります。緊張でドキドキしながら現場に行っても、あかりちゃんがブレずに構えていてくれているから安心できるんです。
最近はクランクアップが近づいてきて、1日の撮影が終わると胸が詰まるような思いに駆られます」
Q2 フミはトキとヘブンをどんな気持ちで見守っていると思いますか?
「第14週でトキとおじじ様(小日向文世)それぞれの恋がいっぺんに成就した時は、もう呆気にとられて夢なのか現実なのかわからないような状態でした。そのシーンの自分の顔が本当にほうけていたのを覚えています(笑)。結婚の挨拶パーティーでヘブンさんがみんなの嘘について言及した時は、トキが隠したいなら隠していいし、親がでしゃばることじゃないと思っていました。きっと(トキの実母である雨清水)タエさん(北川景子)も同じ気持ちで親として一歩引いていたと思います。『娘は娘』というのが、タエとフミの分かり合っている部分ですね。
結婚を機に引っ越した武家屋敷は広く、コソコソ声も『コソコソになってないやろ!』とツッコミたくなるほど狭かった長屋住まいとは大違い。お芝居の距離感も変わりました。あかりちゃんが演じるトキも大人びてきて、なんだか遠く感じますね。子トキ(福地美晴)の頃から見守ってきて、現代の『友達親子』のように仲良く買い物に行ったりするのが楽しかったので、少し寂しさも感じます。
第18週でトキが石を投げられた時は、本当に腹立たしかったです。ヘブンさんと同じく、いち早く犯人を探してやり返しに行きたいぐらいの気持ちでした。トキ自身がヘブンさんのために我慢しているのに親である自分が邪魔してはいけないとぐっと堪えましたが、あんな勝手なことをされたら母親としては許せません」
Q3 夫の司之介(岡部たかし)とフミのシーンについてはいかがですか?
「思いついたことをなんでもポンポン言う司之介を、フミは本当は止めたいんです。どぎついことをストレートに言わんといて!と(笑)。食卓のシーンなどでトキとヘブンさんの会話に口を出す司之介にも入らんといて!と思っていますが、フミがその会話に入ったら輪をかけておかしなこというのもわかっているから、もう黙ってようという気持ちですね。トキが『父上、それ違うから』みたいな感じで話を進めてくれるのが、頼もしいです。
司之介役の岡部さんとのお芝居も面白いです。根底に自分のセリフをきちんと覚えてちゃんと言わなくてはという気持ちはありますが、岡部さんが司之介として揺らがないから、私もフミとして好きにやらせてもらえています。岡部さんとのキャッチボールができている感じがしますね。岡部さんだけでなく、あかりちゃんも小日向さんも、ひらめいたことを前向きにやってみる、お芝居に対するアクティブさがあります。私たちは本番の前のリハーサル段階で初めてお芝居と動きを出すのですが、そこで好きなことをやってみて、違うと思ったらやめるので、スタッフさんは困っているかもしれません(笑)。『ばけばけ』は受け止めてくれるスタッフさんがいるからこそ、成り立っています」
Q4 この先の見どころを教えてください
「私はこの先のトキを思い浮かべるだけでうるっときて涙があふれるほどの、『感慨深い』という言葉ではあらわせない気持ちになっています。この取材を受ける直前に、あかりちゃんがこの先に放送する第22週のシーンのロケの話をしてくれました。私は行っていないので『どうだった?』と聞いたら、『すごくいいシーンが撮れた』と話していたので視聴者の皆さんも楽しみになさっていてください。娘をこれからも応援していただけたら嬉しいです」

