現在放送中のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(総合ほか)で、松江中の英語教師で同中の校長就任を決めた錦織友一を好演している俳優の吉沢亮。「なつぞら」(2019年)以来2度目の朝ドラ出演となった本作で、人知れずコンプレックスに悩む秀才の苦悩を人間味あふれる芝居で表現し、真面目さがおかしみを生む独特の存在感で物語を盛り上げている。錦織は「大盤石」の異名を持つ松江随一の秀才。同中で教鞭をとる傍ら、外国人教師として来日したレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)を通訳としてサポートしてきた。
いつしか2人の間には友情が芽生え、「日本滞在記」を執筆してきたヘブンは、彼のことを「リテラリー・アシスタント(文学的補佐役)」と表現。2人は唯一無二の親友となったが、第92回(10日放送)で、ヘブンから突然熊本に移住する意向を知らされ、大きなショックを受けた。そんな錦織の心境について、吉沢は「彼が松江を離れるなんてことは頭から消えていたはず。この楽しい生活が永遠に続くと、どこかで思っていたのでは」と分析している。
朝ドラ「ばけばけ」とは?
松江の没落士族の娘、小泉セツと、その夫で作家のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとした物語。島根や熊本などを舞台に、怪談を愛し、何気ない日常を歩んでいく夫婦の姿をフィクションとして描く。脚本は「バイプレイヤーズ」(テレビ東京)や「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(総合)などで知られるふじきみつ彦氏。主題歌「笑ったり転んだり」をハンバートハンバートが歌う。
吉沢亮 Q&A
Q1 長期に渡る朝ドラの撮影に参加しての心境は?
「錦織は出演シーンが多いのですが、それでも自分よりも大変なヒロインがいるということに僕は支えられています(笑)。ずっと楽しくやれています。
ヒロイン・髙石あかりさんはカメラが回ってないところでもヒロイン然としていて、たたずまいが非常に大人。すごくピュアな部分も持っているので、みんなで支えてあげなきゃと思っているのですが、結果的に彼女に支えてもらっています。撮影が続くと大変な瞬間がどうしてもありますけど、一番しんどいはずの髙石さんが一番楽しそうに現場にいてくれるんです。そこに救われているキャストやスタッフの方が、たくさんいると思います」
Q2 改めて錦織役についての思いをお聞かせください
「回を追うごとに彼の不器用さや人間らしさ、可愛げのあるところが出てきているなと感じます。
実は錦織がまだ東京にいた第4週だけ、大盤石感の極みみたいなものを意識しながら演じていたんです。まだ教員資格検定の前で、自分が大盤石と呼ばれていることへの自負や自信がみなぎっていたし、日本を変えたいという思いで東京に来ている。そのギラギラ感や大盤石としての落ち着きを意識しながら演じました。それ以降は、試験にも落ちて県知事(佐野史郎)のお声がけで松江に戻り、学歴を隠しながら仕事をしている。教育への熱量はあるにしても、本来は立ってはいけない場所にいるという負い目のようなものから、何事に対しても一歩引いてしまう感覚を大事に演じています。
錦織にとっての庄田(濱正悟)はある種、コンプレックスみたいなものです。受験前は錦織が“大磐石”、庄田は“半分弱”なんて言われていたのに、試験の結果一つで立場が逆転してしまいました。そんな二人が友達でもあるという絶妙な距離感が出ればいいなと思っています。
松江中の生徒の前では大盤石としての地位を守ろうと頑張っているので普段より声を少し低くしていますが、それすら空回りしているような瞬間も。錦織の不器用さが透けて見え、生徒たちにもだんだん伝わっている感じがしますよね。おいしいキャラクターをやらせていただいているなと思います」
Q3 印象に残っているシーンは?
「第14週の『イテモ、イイデスカ?』のシーンが印象的です。最初はちゃんと錦織も含めた3人のシーンだったのですが、気づいたら2人が感動的な見つめ合いを始めていて。僕から錦織が一人になるように動いているわけではありません。みんなが錦織から離れていくんです(笑)。本の巧さと演出の巧さがすばらしいシーンでした。
結婚挨拶パーティーの撮影も印象的でした。相当長いシーンを一連で撮っていたのでかなりの集中力が必要でしたが、トキやヘブンをはじめ、皆さんのお芝居に非常に胸を打たれました。ただ、『ダラクソがー!』と叫ぶ前にフミさん(池脇千鶴)が『なら皆で一緒にやりません? “家族”一緒に』と言った時は、錦織役の僕は『帰ろっかな……』と思いましたね(笑)。(写真を見返しながら)こうしてみると楽しいシーンばかりでした」
Q4 ヘブンが熊本に行くと言った時、錦織はどんな心情だったと思いますか?
「ヘブン先生と共に過ごす日々の中で、彼と一緒に面白いものを作っていくことや、彼の成し遂げるものを一番近くで見ていたいという思いが錦織の中で非常に強くなっていくのを感じていました。単純に友達として隣にいたいという気持ちも大きくなっていたと思うので、突然熊本に行くと聞いた時はもう意味がわからなかったでしょう。パニックというか、悲しいどうこう以前の感覚だったと思います。第14週でヘブンがトキに『(松江に)イテモ、イイデスカ?』と聞いた時点で、彼が松江を離れるなんてことは錦織の頭から消えていたはず。この楽しい生活が永遠に続くと、どこかで思っていたのではないでしょうか」
Q5 今後の見どころは?
「これからは人間ドラマとしての面白さがより濃くなっていきます。先週(第18週)は寂しさと温かさみたいなものがあふれ返っていて、ふじきさんの本って本当にいいなと感じました。トキとサワが笑い転げるシーン(第88回)は、台本を読みながら泣きそうになった部分です。今後も、そういう人間の温かさや冷たさが見えてくる展開になるのではないかと思います。引き続き楽しんでいただければうれしいです」

