子どもの近視は、発症年齢が低いほど重症化(強度近視化)するリスクが高まります。また、近視は将来、失明にもつながる合併症のリスクを高め、近視の度数が強いほどそのリスクも上昇します。近視を元に戻す治療は今のところありませんが、進行を抑える二つの治療がこの1年ほどの間に相次いで承認されました。2026年1月27日にクーパービジョン・ジャパンが主催した「世界と日本の近視進行抑制を考えるプレスセミナー」での講演をもとに、子どもの近視を放置してはいけない理由や、進行抑制治療などについてまとめました。
中学3年生の6割が近視―発症が早いほど進行がより大きく
子どもの近視が増加しています。文部科学省が2022年度に実施した近視実態調査では、小学1年生時点で17.3%がすでに近視であることがわかりました。その割合は学年が上がるごとに増え、小学校6年生は52.8%、中学3年生では62.6%となります。増加の要因としては、読書や勉強に加えてデジタルデバイス使用による「近見作業」時間の増加と、屋外活動時間の減少による自然光の暴露不足があるとされています。
近視は発症年齢が低いほど、重症化(強度近視化)するリスクが高まります。海外の研究では、3~6歳で発症すると11歳時点では強度近視に近い-5.48D(ディオプトリ:レンズの屈曲度数を表す単位、数値が大きいほど強くなる)、7歳で発症だと-4.46D、10歳で発症ならば-1.53Dにそれぞれ近視が進んだと報告されています。また、近視の進行は一定の速度で進むのではなく、変化量は8歳ごろに最大になりその後は減少していきます。
近視は一定年齢に達するまで進行するため、「子どもに対してはいかに近視が進まないようにするかが重要になります」と、東京科学大学医学部眼科学教室の ⼤野京子教授は指摘します 。
近視は失明の原因ともなりうる合併症の将来におけるリスクを高めることも報告されています。強度近視(-6D以上)の場合、近視がない人と比べて将来の発症リスクは白内障で2.87倍、緑内障で2.92倍、網膜剥離で12.62倍と、それぞれ高まるとの研究結果があります。これらの合併症は、近視の度数が強いほどリスクも高くなるとされています。
「近視を治療するということは、今見えにくいという問題への対処だけでなく将来の合併症リスクも低減させるという二重の意味があると考えます」と大野教授は話します。
近視はなぜ起こる?
近視とは、目の中に入った光線のピントが合う位置が、網膜よりも前になっている状態です。眼球は直径約24mmの球体ですが、近視では成長に伴い前後方向に伸びたラグビーボールのような形に変形することでピントが合わなくなります。一度伸びてしまった眼球の眼軸長を縮める治療方法は、今のところありません。

「身長が伸びている時期に眼球も伸びます。その時期に介入してできるだけ近視の進行を抑制することが、将来的な度数や合併症抑止のために重要です」と大野教授は訴えます。

