NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の舞台は第20週から熊本へ。ここで再び“台風の目”となりそうなのが、俳優の岡部たかし演じる松野司之介だ。ヒロイン、トキ(髙石あかり)の父である司之介は、元士族ながら明治の激動期に「ウサギ相場」で大失敗し、一家を極貧生活へ叩き落とした過去を持つ。トキとレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の結婚によって借金は完済し、ようやく平穏な生活を手にしたかに見えたが、新天地・熊本での退屈な日々に耐えかねた彼は、家の蓄えを手に「小豆相場」という危ない橋を再び渡ろうとしている。演じる岡部は、何度失敗しても懲りない司之介に「もっと成長せぇよ」と呆れつつも、「家族のため、自分のための正直な言動が周囲をいら立たせることもあるが、彼は真剣に正しいと思っている。だから、アホを演じている感じにはならないようにしたい」と語る。その言葉からは、家族を振り回しながらもどこか憎めないキャラクターへの、彼なりの深い愛情がにじむ。
朝ドラ「ばけばけ」とは?
松江の没落士族の娘、小泉セツと、その夫で作家のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルとした物語。島根や熊本などを舞台に、怪談を愛し、何気ない日常を歩んでいく夫婦の姿をフィクションとして描く。脚本は「バイプレイヤーズ」(テレビ東京)や「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(総合)などで知られるふじきみつ彦氏。主題歌「笑ったり転んだり」をハンバートハンバートが歌う。
岡部たかし Q&A
Q1 番組の反響や、放送を見ての感想を
「視聴者の方や周囲から『面白い』など、好評の声をいただくことが多く、皆さんに楽しんでもらっていることを日々、実感しています。放送では自分の知らないシーンもあり、ヘブンのビールを探すシーンはこんなことしていたんだとか、みんなこんなスキップをしていたんだと笑いながら見ていて、完全に視聴者として『ばけばけ』を楽しんでいます。やっぱりふじきみつ彦君の本は面白いなとか、自分もやってきたことなのに、全体で見てもすごいなと思ったりしています」
Q2 演じていて改めて思う司之介の印象は?
「演じながら、僕自身も『ええ加減にせえよ』『もっと成長せぇよ』と思うことはあります(笑)。でも、自分なりに司之介のことを愛して、脚本に忠実に演じています。
司之介は、思ったことをすぐに口に出しちゃう正直者です。正直がゆえに、思いついたことが瞬時に行動と言動に繋がるし、それが家族のためであり、自分のためでもあるのだと思います。それによって周囲をいら立たせることもありますが、彼は真剣だし、正しいと思っていると思います。だから、司之介を演じる時は、アホを演じている感じにはならないようにしたいと思っています」
Q3 ここまでの撮影で印象に残っているシーンは?
「14週で、みんなで『だらくそが!』と叫ぶシーンです。このシーンは、松野家にとって、『ついに、この時が来たか』という瞬間だと思います。トキは、ここで初めてタエを『ママさん』と呼びましたが、あのトキの表情は、本当にグッと来るものがありました。あかりちゃんのすごいところは何回も見てきましたけど、あの日は特にすごかったですね。大人になったトキが、まるで子どものように声をあげて泣いていたので、初めてトキが松野家に来たシーンを思い出したりしました。今思い出しても涙が出て来そうです」
Q4 司之介はなぜ松江から熊本に行くことを決断したのでしょうか
「現代でも、故郷を捨ててどこかに引っ越すということは、なかなか勇気がいることだと思います。司之介にとっても、やっぱりものすごい決断だったのかなと思いますね。司之介にとって家族は大事だし、やっぱり家族と一緒にいたい。もう長屋に戻りたくないと言っていますし、表面的な損得勘定があることも本当だと思いますが、それよりも深い根底には、家族のことを思う気持ちがあるのだと思います。その両方があっての決断だと思います」
Q5 後半の見どころ、視聴者に向けてのメッセージを
「熊本に行った司之介は、やることがなくて暇になります。あまりすることがないから、ちょっとのことでも大事件にしたりして、その辺のものがたりの展開もまた面白いなと思います。司之介は一生こんな感じで生きていくのかなと思っていますし、もう自分の人生を全うしてもらいたいですね。最後には、『あの人は、幸せな人生だったよね』と思われるような生き方してくれたらと思っています。
家族としては、熊本で書生さんや女中さんが加わり、その中でみんながあんなこと言ったり、こんなこと言ったりするのが見どころだと思っています。ここでの会話劇は、ふじき君の脚本の真骨頂だと思います。松野家の家族の形は、これからも変わっていくと思いますが、それは面白い変化だと思うので、視聴者の方にもそのさまを見て楽しんでいただけたらと思います」

