犬の「急な下痢」には本当に抗生物質が必要?

犬が突然下痢をすると、多くの飼い主は不安になります。食べすぎ、拾い食い、ストレス、季節の変わり目など原因はさまざまですが、下痢を起こしたからといって必ずしも細菌に感染しているわけではありません。にもかかわらず、これまで動物病院では「まず抗生物質を使う」という治療が一昔前は一般的でした。
しかし近年、人の医療と同じように、動物医療でも「本当に必要な場合だけ抗生物質を使う」という考え方が広がっています。抗生物質をむやみに使い続けると薬が効きにくい耐性菌が増えてしまい、将来本当に必要なときに効かなくなる危険があるためです。
今回紹介する研究では、犬の急性下痢の治療で“抗生物質を使わない治療”がどれほど効果があるのかが調べられました。研究に参加したのは、急に下痢になった犬109頭。その犬たちを二つのグループに分け、一方には抗生物質を投与し、もう一方にはプロバイオティクス(善玉菌のサプリ)を投与しました。犬の状態は獣医師が定期的に診察し、飼い主の満足度も調査されました。
驚くべきことに、抗生物質を使わなかったグループの多くが、抗生物質を使った犬と同じくらい早く下痢が改善していたのです。さらに、多くの飼い主がその治療結果に満足していました。
つまり、急な下痢であっても、原因が細菌感染でない場合は、抗生物質がなくても問題なく治るケースが多いということが研究から分かってきました。
プロバイオティクスという方法――お腹のバランスを整える治療

この研究で抗生物質の代わりに使われたのがプロバイオティクス、いわゆる“お腹の良い菌”を補うサプリメントです。善玉菌が腸の中で働くことで、乱れた腸内環境を整え、自然な回復を助けます。
抗生物質の場合、腸の悪い菌を殺すだけでなく、良い菌まで減らしてしまうことがあり、その結果、下痢が長引いたり再発したりすることがあります。一方、プロバイオティクスは腸の“味方”を増やす治療なので、体に余計な負担がかかりにくいのです。
さらに、この研究では“飼い主が治療にどれだけ満足したか”も調べられました。すると、プロバイオティクスを使った飼い主の約80%が「治療に満足している」と答えたのです。
飼い主が満足した理由として考えられるのは以下のような点です。
副作用が少なく、安心して使えた 薬を飲ませるストレスが少なかった 症状の改善が早かった 自然な治し方に納得できたこれらのポイントは、犬にも飼い主にもやさしい治療であることを示しています。

