ADHDは、不注意や多動性・衝動性などの特性によって、学校生活や仕事などの日常生活に影響を及ぼす疾患です。ADHDの治療には、環境を整える工夫や精神療法などに加えて、薬物療法があります。本記事では、ADHDの概要を解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「ADHDの薬」を服用することでできなくなることはご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
ADHDの概要と主な治療法

ADHDとはどのような病気ですか?
ADHDは、注意欠如多動症と呼ばれる発達障害(神経発達症)の一つです。発達の水準からみて不相応な不注意や多動性・衝動性などの特性が持続的に認められます。代表的な症状は次のとおりです。
細部に注意を払えない
課題や遊びで注意を維持することが難しい
課題や活動に必要なものをなくしやすい
外からの刺激によってすぐに気が散る
もの忘れが多い
手足を落ち着きなく絶えず動かしたり、身体をくねらせたりする
離れるべきではない状況で、席を離れる
順番を待つことが難しい
ADHDはこのような症状が少なくとも6ヶ月以上持続し、日常生活に支障をきたす疾患です。なお、これらの特性は12歳以前に現れるとされています。
ADHDは薬で治癒しますか?
ADHDは薬で治癒する疾患ではありません。ただし、適切な対処法や環境調整、薬物療法などの治療によって、困りごとの軽減が期待できます。
ADHDの主な治療法を教えてください
ADHDの治療には、非薬物療法と薬物療法があり、個々の状態に応じて治療が選択されます。非薬物療法には環境調整や精神療法があります。環境調整は、日常生活のなかで、わかりやすく指示を伝える、学習などの課題を小分けにして休憩を挟むといったような工夫を行います。
精神療法は、症状そのものへの理解を深めて、それに対処するためのスキルを身につけることを目的とします。その一つに認知行動療法があります。考え方や行動の癖やパターンを見直し、衝動的な行動や注意の偏りなどを少なくしていきます。そのほかに、ペアレントトレーニングが行われることもあります。親が子どもの褒め方や指示の出し方など具体的な養育のスキルを学びます。
薬物療法は、このような非薬物療法を行ってもなお、改善しない場合に検討されます。AHDHで使用するのは、脳内の神経伝達物質に作用する薬剤で、症状の緩和を目指します。
編集部まとめ

ADHD治療薬は、脳内の神経伝達物質の働きを調整することで、不注意や多動性・衝動性などの症状を和らげます。治療薬には中枢神経刺激薬と非刺激薬があります。効果が期待できる一方で、食欲不振や眠気などの副作用がみられる可能性があります。また、依存性が指摘されている薬剤もあります。医師の判断によって適切な薬物治療が選択されます。ただし、薬物療法はあくまで治療の一部であり、環境調整や精神療法と組み合わせることで効果が期待できます。医師と相談しながら、ご自身の症状や状況に合った治療法を選択しましょう。
参考文献
『Q68:注意欠如・多動症ADHD)とはどんな疾患ですか?』(一般社団法人 日本小児神経学会)
『今村明先生に「ADHD」を訊く』(公益社団法人 日本精神神経学会)
『ADHD(注意欠如・多動症)』(NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター)
『Q69:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?』( 一般社団法人 日本小児神経学会)
『ADHDについて』(信州大学医学部 分子細胞生理学教室)

