“必要とされる感覚”の甘さ
「それからさ、公園行くのたのしみになっちゃって」
里奈は小さく笑う。
「今日いるかな?って…胸がドキドキした」
気づけば服装を気にするようになり、会話を思い出しては、寝る前に笑ってしまう。既読がつくだけで、心がはずむ。
私は、寒気すら感じ始めていた。里奈が拓也に向ける感情…それはもう、ただの友だちに向けるものではないと思った。
「ただ、本当に何もしてないよ?」
良心がいたむのか、里奈は何度もその言葉を使う。
「でもさ……私、拓也のこと、好きになっちゃったんだと思う……」
胸がざわついた。共感は距離を縮め、傷の見せ合いは心を近づける。そして、気づいた時には、お互いが“特別”になっている。
公園でならんで座る2人。子どもたちを見守りながら、目が合い、笑う。
その時間が、日常の中で一番のたのしみになる。それはもはや、友情の形をしてはいなかった。
「奈緒……どうしたらいいと思う?」
里奈の問いに、私はすぐには答えられなかった。
分かっている。このまま進めば、どこに行き着くのか。でも、止める言葉が見つからない。
なぜなら──だれかに必要とされる感覚は、あまりにも甘いから。
仲の良い友人は、いつしか“特別な異性”に変わっていた。ただ、一線は越えていない。
でも、心はもう、お互いにかなりふみ込んでいるように思えた。2人の親友として、その事実が一番、こわかった。
あとがき:共感は時に"境界線"を越える
だれかに否定され続ける日々の中で、「あなたはわるくない」と言ってくれる存在は、光のように見えることがあります。
それが、既婚者同士であっても、心は理屈どおりには動きません。「一線を越えていないから大丈夫」。そう言い聞かせながら、実は一番、越えてはいけない“心の距離”が縮まっていく。甘さと危うさは、紙一重なのかもしれませんね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

