達也が「サッカーを辞める」と告げた瞬間、美香子はテーブルを叩き「あんたは達也に自分の理想を押し付けているだけ」と亘に激しく反撃。ついに自分勝手な体育会系夫に、はっきりとNOを突き付ける。
わが子の姿に怒りは頂点
前日、夫が自室の達也に聞こえるような暴言を吐いたあと、部屋を見に行ったら、達也は眠っていた。泣き疲れてしまったのかもしれない。翌日は亘が仕事で、家族で顔を合わせるのは夕食の時間になった。
夕食で家族で顔を合わせると、達也静かに席についていた。表情はほとんどなかったけれど、開口一番、亘に向かってこう言った。
「パパ、昨日の話だけど…」
達也が、意を決したように小さな声で言った。
「僕、サッカー…辞めるよ。僕には資格ないと思う」
その言葉を聞いた亘は、一瞬びっくりしたようだったが、すぐに表情を元に戻してこう言った。
「もう、やる気はないってことでいいんだな?」
達也は、なんとも言えない表情を浮かべる。その顔を見て、私は黙っていられなくなった。
「いい加減にしなさいよ、亘」
自分の理想を押し付ける夫にブチ切れ
亘は急に私が怒り出したと思ったのだろう。びっくりした表情だった。
「なんだよ、急に」
「急になんかじゃない。昨日からずっと怒ってる。達也は達也なりに成長しているのに、周りと比較ばっかりして『金と時間の無駄』?そんなこと言う親がどこにいるのよ、亘こそ、父親やってる自覚あるの?」
私の声は震えていたけれど、止まらなかった。今まで抑え込んできた感情が、津波のように噴き出した。
「亘は、自分の理想を押し付けているだけ!あなたの学生時代の悔しさなんてどうでもいい。達也はあんたの分身じゃないんだよ」
亘は目を丸くして、言葉の勢いは一気になくなった。
「ち、違う、俺は、ただ…真剣にやってほしくて…」
「達也は真剣にやってるし、サッカーが好きなんだよ!あの公園での笑顔見たでしょう?クラブで委縮するのは、亘のせいだよ。そんなことばっかりするなら、もう練習見に行かなくていいから」
私は達也に向き直り、優しく言った。
「達也、あなたがサッカーをしたいなら辞める必要なんてない。好きなら頑張りな。それを応援するのがパパやママの役割なんだよ」

