介護保険サービスを利用し続けると、月々の自己負担が重く感じられる場面があります。こうした負担を軽減するために、高額介護サービス費が設けられています。
本記事では高額介護サービス費について以下の点を中心にご紹介します。
高額介護サービス費とは
高額介護サービス費の対象になる方
高額介護サービス費の申請方法
高額介護サービス費について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
高額介護サービス費とは

高額介護サービス費とはどのような制度ですか?
高額介護サービス費とは、介護保険サービスを利用した際の自己負担が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。介護保険は、所得に応じて利用料の1〜3割を自己負担しますが、サービスを継続的に利用すると、月ごとの負担が大きくなることもあります。
そこで設けられているのが高額介護サービス費です。1ヶ月間に支払った介護保険サービスの自己負担額を合算し、世帯や所得区分ごとに定められた上限額を超えたぶんについて、後日支給される仕組みとなっています。
対象となるのは、訪問介護やデイサービス、施設サービスなどの介護保険サービス利用料で、居住費や食費、日用品代などは含まれません。高額介護サービス費を正しく理解し活用することで、介護が長期化した場合でも、家計への負担を抑えながら必要なサービスを利用しやすくなります。
医療費の高額療養費制度とは何が違いますか?
高額療養費制度と高額介護合算療養費制度の違いは、負担額を集計する範囲と期間にあります。高額療養費制度は、医療保険のみを対象とし、原則1ヶ月ごとに医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。入院や手術などで、短期間に医療費がかさんだ際に利用されます。
一方、高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の両方を対象とし、1年間(毎年8月〜翌年7月まで)の自己負担額を合算して判定します。医療と介護を継続的に利用している世帯において、年間の負担が重くなりすぎないよう調整する制度です。
つまり、月単位で医療費を軽減するのが高額療養費制度、年単位で医療と介護をまとめて軽減するのが高額介護合算療養費制度という点が、両者の違いといえるでしょう。
高額介護サービス費の対象条件と支給の仕組み

高額介護サービス費の対象になるのはどのような方ですか?
前述のとおり、高額介護サービス費の対象となるのは、介護保険サービスを利用し、1ヶ月の自己負担額が一定の上限を超えた方です。要介護・要支援認定を受けており、居宅サービス、介護施設サービス、地域密着型サービスといった介護保険の給付対象サービスを利用していることが前提となります。
具体的には、自宅で訪問介護やデイサービス、ショートステイなどを利用している方、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護施設に入居している方、あるいは認知症対応型サービスや小規模な施設を利用する地域密着型サービスの利用者などが該当します。これらのサービスにかかる介護保険自己負担分が合算され、所得や世帯状況に応じた月額上限を超えた場合に、高額介護サービス費が支給されます。
一方で、施設の居住費や食費、日常生活費、福祉用具の購入費や住宅改修費などは、介護保険が適用される場合であっても、高額介護サービス費の対象には含まれません。そのため、介護サービスを継続的に利用している方ほど、どの費用が対象で、どれが対象外かを把握しておくことが重要です。
日常的に介護保険サービスを利用しており、毎月の自己負担が家計の負担になっている方は、高額介護サービス費の対象となる可能性があります。まずは利用しているサービス内容と自己負担額を確認してみるとよいでしょう。
高額介護サービス費の対象となる介護サービスを教えてください
高額介護サービス費の対象となるのは、介護保険が適用されるサービスを利用した際の1〜3割の自己負担分です。介護に関わるすべての費用が対象になるわけではない点に注意が必要です。
居宅サービスは、訪問介護や訪問看護、訪問リハビリ、デイサービス、ショートステイなど、自宅で生活しながら受ける介護保険サービスの自己負担分が対象となります。福祉用具の貸与や居宅療養管理指導も含まれます。
介護施設サービスは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで受ける介護サービスの自己負担分が対象です。ただし、食費や居住費、日常生活費は含まれません。
地域密着型サービスも対象で、小規模多機能型居宅介護やグループホームなどを利用した際の自己負担分が該当します。こちらも食費や滞在費は対象外です。
一方、住宅改修費や福祉用具の購入費、医療費などは高額介護サービス費の対象外となります。介護保険サービスとしての自己負担分かどうかを基準に確認するとよいでしょう。
所得区分ごとの自己負担の上限額はどのように決まりますか?
介護や医療の自己負担には、所得や世帯構成に応じた上限額が設けられています。これは、一定期間内に支払った自己負担が過度に大きくならないよう調整するための仕組みです。
まず、介護サービスの自己負担割合は、65歳以上の方の場合、所得水準に応じて1~3割に区分されます。現役並みの所得がある場合は負担割合が高くなり、年金収入などが中心の方は低く設定されます。さらに、要介護度ごとに定められた支給限度額を超えたぶんは、全額自己負担となる点にも注意が必要です。
加えて、1年間(毎年8月〜翌年7月まで)に支払った医療費と介護費の自己負担額を合算し、その合計が世帯ごとの上限額を超えた場合には、所得区分に応じて超過分が払い戻されます。上限額は、年齢構成や課税所得の状況によって段階的に設定されています。
世帯で利用した介護サービスの自己負担額は合算されますか?
同じ世帯で複数人が介護保険サービスを利用している場合、自己負担額は世帯単位で合算されます。1ヶ月間に世帯全体で支払った自己負担額が、所得区分ごとに定められた世帯の自己負担上限額を超えたとき、その超過分が高額介護サービス費として払い戻されます。
払い戻される金額は、まず世帯全体でいくら超えたかを計算し、その後、各利用者の負担割合に応じて按分されます。そのため、夫婦など世帯内に要介護者が複数いる場合でも、上限額は世帯で一つと考え、還付は個人ごとに分かれて行われる仕組みです。
この世帯合算の仕組みにより、複数人が介護サービスを利用していても、家計全体の負担が過度に大きくならないよう配慮されています。

