●繰り返すことで違法となる場合もある
また、1回なら違法とはいえない内容でも、繰り返すことで違法となる場合もあります。
名誉感情侵害の成否は「社会通念上許される限度を超えるか」で判断されますが(最高裁平成22年(2010年)4月13日判決)、この判断において「執拗性=繰り返し」も考慮要素とされています。
実際、インターネットの掲示板上で「くそ」という投稿を5時間の間に13回行った場合は権利侵害が認められた一方、同じ表現を1回にとどまった場合は否定された裁判例があります(東京地裁平成29年1月16日(発信者情報開示請求の事案))。
仮に「プレーへの批評として適法の範囲」にとどまる内容であっても、伊藤投手本人のインスタグラムに何度も投稿し続ける行為は、繰り返すという態様全体として社会通念上許される限度を超えた侮辱行為と評価される可能性が高くなるといえます。
●「捨て垢」でも特定できる可能性がある
「匿名アカウントだから大丈夫」と思っている人もいるかもしれませんが、「発信者情報開示請求」という手続きによって書き込みをした人が特定される可能性があります。
2022年に開示手続の負担が軽減される新制度が導入されてから、請求件数は増加傾向にあります。当然ですが、いわゆる「捨て垢」であっても特定される可能性はあります。
SNS上での厳しいコメントは、視聴者が思っている以上に本人に大きな精神的苦痛を与えます。
WBC敗退は残念でしたが、一番落ち込んでいるのは連覇を目指して必死で準備をしてきた選手や監督でしょう。
観る側としては、応援が攻撃にならないように注意しつつ、シーズン開幕後の選手達の活躍を楽しみにしたいものです。
(参考文献) 「誹謗中傷の判断基準と法務が取るべき対応」(清水陽平/BUSINESS LAWYERS、2024年9月) 「最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版」(松尾剛行、山田悠一郎/勁草書房、2019年2月)
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

